超高級魚のひとつで、庶民ではなかなか手を出せないシロアマダイ。とくに東日本の市場では目にする機会も少ないものでしたが、ここのところちょっと事情が変わってきたようです。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
甘みがあるからアマダイ
鯛の代表といえばマダイ、ですが、それによく似た名前で鯛とは関係のない魚があります。それはアマダイ。
アマダイはしばしば「甘鯛」と書かれるとおり、生で食べるとほのかに甘みを感じます。これは実際に人が舌で感じられる程度の糖が含まれているというわけではなく、旨味成分であるアミノ酸が多く、またいくつかの種類のアミノ酸が相互に作用することによって「甘みがあるように感じる」ことが理由であると考えられています。
なお、アマダイは「尼鯛」と書かれることもよくありますが、これはその独特の顔が頬かむりをした尼(仏教における女性の出家者)のように見えるからだと言うのが由来です。
シロアマダイが最も高価
そんなアマダイですが、市場にて流通するものは「3色」います。アカアマダイ、シロアマダイ、キアマダイの3種で、それぞれ体色が赤、白身がかったピンク、黄色みがかった赤をしているためにこう呼ばれています。
アマダイはいずれも非常に高価な魚ですが、その中でもとくにシロアマダイは頭一つ飛び抜けています。寒い時期の2kg程度のものはキロ単価1万円をも上回ることがあり、庶民ではとても手が出せません。
アカアマダイ、キアマダイも近年、価格の高騰が著しく、1kgを超えるものはキロ単価8000円ほどと言われています。キアマダイが一番安いと言われますが、鮮度の良いものであればほとんど差はないようです。
ただし、いずれも小さいものはそこまで高価ではなく、ひとまず味を見るという程度なら30cm前後のものを購入するのがよいかもしれません。
シロアマダイが身近な魚に?
そんな「超高価」なシロアマダイですが、もしかすると今後、多少は手に入りやすくなるかもしれません。というのも、徐々に水揚げされる範囲が広がっているためです。
シロアマダイの分布域は「関東地方南部・若狭湾以西」とされてきましたが、基本的には関西地方以南、九州や四国での水揚げが多い魚でした。しかしこのところ中京以東でも数を増やしているようで、静岡県や神奈川県での水揚げが徐々に増えてきています。そうなれば豊洲に入荷する量も増え、結果的には値下げにつながるものと考えられます。
シロアマダイの身はまるでボタンエビのような味わいがして、その値段に見合う美味です。現状の「清水の舞台から飛び降りる覚悟で買う」レベルから「ちょっと頑張れば食べられる」レベルまで値段が下がってくれたらありがたい限りですが、どうなるでしょうか。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>