「くさや」は臭いのになぜ美味しいのか 苦手な人はマヨネーズと一緒がオススメ

「くさや」は臭いのになぜ美味しいのか 苦手な人はマヨネーズと一緒がオススメ

世界の臭い食材ランキングでも上位入賞間違い無しとされる「くさや」。その強烈な匂いからは想像のつかない美味しさについて、本場で食べながら考えてみました。

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八丈島でくさや食べてきた

私事で恐縮ですが、先日筆者は伊豆大島の南部に位置する「八丈島」に取材に行ってまいりました。

羽田空港から1時間足らずで到着する遠くて近い島である八丈島には、東京都に属していながら様々な独自の食文化が存在していますが、「くさや」はその代表的なものでしょう。

「くさや」は臭いのになぜ美味しいのか 苦手な人はマヨネーズと一緒がオススメくさや(提供:PhotoAC)

くさやは同じ伊豆諸島の新島(大島という説もある)を発祥地とし、ここ八丈島でも盛んに作られている干物の一種で、その名前の通り非常に臭く、食べ物とは思えない匂いがします。

生のときでも三角コーナーで腐敗した魚の内臓のような香りがあるのですが、焼くとより強くなり、言葉を選ばずに言うとトイレの個室のような匂いがします。しかし面白いことに、そのような強烈な匂いがあるにも関わらず、数多の食通を魅了する美味な食材としても知られているのです。

予想以上に○○○がない

筆者も今回の取材にあたり、せっかくなので島の料理屋で「ムロアジの焼きくさや」を注文してみました。

注文後しばらくして店内がトイレの匂いに包まれ、緊張が走るなか御本尊がテーブルへと運ばれてきました。見た目はやや柔らかめの干物のように見えますが、匂いはまさに鶏小屋や牛小屋のそれです。

「くさや」は臭いのになぜ美味しいのか 苦手な人はマヨネーズと一緒がオススメ割いたくさや(提供:PhotoAC)

しかし口にすると、普通の鯵の干物とは比較にならないほどの濃厚な旨味が口いっぱいに広がり、えもいわれぬ快感に包まれます。通常の干物だと最初にツンとしたしょっぱさを感じるものですが、くさやの場合はそれがなく、むしろ「本当に塩水で漬けているの?」と思うほどです。

また、普通の鯵の干物であれば脂がある程度乗っていないとパサつきを感じてしまいますが、くさやの場合は脂を感じずともジューシーで柔らかいという印象を受けます。噛み締めるほどに旨味があふれ、お酒が止まらなくなります。

アレを付けて食べると最高

一般的に、魚の干物は開いた魚を塩水に漬けてから干しあげて作るのですが、くさやの場合はただの塩水ではなく、数十年以上も使いまわされてきた塩水、いわゆる「くさや汁」に漬けてから干しあげます。

このくさや汁の中には様々な成分や酵素が含まれているのですが、どの成分や酵素の力でこれほどまでの美味しさが生まれるのかははっきりとはわかっていないそうです。

「くさや」は臭いのになぜ美味しいのか 苦手な人はマヨネーズと一緒がオススメくさやと一味マヨネーズ(提供:PhotoAC)

ただし、くさや汁は青魚による食中毒の主因の一つ「ヒスタミン」を分解する力をもっており、そのために塩気を高めたりカチカチに干しあげずとも長期間の保存が可能になったといいます。これにより、まろやかな塩気とジューシーな味わいが楽しめるのかもしれません。

なお、八丈島ではくさやに「一味唐辛子+マヨネーズ」が添えられるのですが、これをつけて食べると匂いが穏やかになり、刺激と脂分が足されてまさに完璧な味わいになります。くさやを食べてみたいけどどうしても匂いが気になるという人は、ぜひこの食べ方を試してみてください。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>