有明海で今年も赤潮が発生 毎年起こるのは「潮流の弱まり」が原因?

有明海で今年も赤潮が発生 毎年起こるのは「潮流の弱まり」が原因?

三方を陸地で囲まれた大きな入り江状の有明海。かつては豊かな漁場として知られましたが、最近では度重なる赤潮に苦しめられ続けています。

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その他 サカナ研究所

有明海全域で「赤潮警報」

福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県に囲まれ、非常に深い入り江状の内湾となっている有明海。そんな有明海で先月中旬「赤潮警報」が発令されました。

有明海で今年も赤潮が発生 毎年起こるのは「潮流の弱まり」が原因?有明海(提供:PhotoAC)

警報を発令したのは熊本県。同県天草市の本渡港で、赤潮の原因となるプランクトン「カレニア・ミキモトイ」が高濃度で分布していることが確認されたためです。

県内では昨年、有明海同様に閉鎖性海域である八代海で、カレニア・ミキモトイによる大規模な赤潮が発生。養殖魚の大量死が発生するなど甚大な漁業被害を出しました。そのことを踏まえ、今回は早めに警報を発令し、漁業者などへの警戒を呼びかけた形です。

もはや恒例行事

残念なことに、有明海での赤潮発生はもはや恒例行事となっています。昨年度には、熊本県内だけでも14回もの赤潮発生が報告されました。

有明海で今年も赤潮が発生 毎年起こるのは「潮流の弱まり」が原因?赤潮(提供:PhotoAC)

発生地は有明海の広い範囲に及び、発生時期もシーズンを問わない状況です。原因となったプランクトンの種類も上記のカレニア・ミキモトイのほか「ヘテロシグマ・アカシオ」、「スケレトネマ属珪藻類」など様々。

さながら「赤潮銀座」とでも呼ぶべき状況で、有明海がいかに赤潮の起こりやすい海域かということがわかります。

原因はなにか

有明海がここまで赤潮だらけになってしまった原因として、考えられているものはあまたあります。

最近の研究では「潮流の弱まり」がその一因だという指摘があります。諫早湾干拓などによって干潟が減少した結果、湾内の対流が弱まり、湾奥部に注ぐ栄養豊富な河川水が逗留しやすくなった結果、そこにプランクトンの大発生が起こり赤潮に繋がっている、という説です。

有明海に限らず、瀬戸内海や大阪湾など赤潮が多い海域では干潟の埋立て等が盛んに行われてきた歴史があり、干潟の減少が様々な形で赤潮の発生に繋がっているのではないかといわれています。

有明海で今年も赤潮が発生 毎年起こるのは「潮流の弱まり」が原因?赤潮は環境破壊の結果(提供:PhotoAC)

また、有明海ではこれまで筑後川などの大河から流入する粒の小さい泥(シルト)が、海中の透明度を下げ、それがプランクトン増殖を抑制してきました。しかし筑後大堰や各種ダム建設の影響で河川からのシルト流入が減り、海水の透明度が上がったことが赤潮の発生増につながっているという説も出ています。

かつては多種多様の海の幸を育み「宝の海」と言われた有明海ですが、いまやその影も形もありません。有明海の赤潮は、我々日本人が引き起こしてきた環境破壊の集大成と言えるものなのかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>