「海のミルク」とも言われ、老若男女に人気のある人気の貝・牡蠣。生でも、焼いても絶品な牡蠣ですが、常に食中毒のリスクが付きまとう点がネックの食材です。そんな牡蠣のウィークポイント「あたる」可能性を、「完全陸上養殖」という方法で打ち消し、「あたらない牡蠣」を誕生させた企業があったので、詳細をご紹介していきます。
(アイキャッチ画像提供:株式会社ゼネラル・オイスター)
完全陸上養殖への「壁」
完全陸上養殖には「壁」がありました。
牡蠣の餌「植物プランクトン」の培養
完全にノロウイルスが存在しない海水として、海洋深層水を養殖海水に使用することにしました。
しかし、課題となったのは、海洋深層水には人に害を与えるウイルス・細菌が存在しない代わりに、牡蠣の餌となる微細藻類※6(植物プランクトン)も存在しないことでした。
研究機関やメーカーとの共同研究
GOファームはまず、海洋深層水の清浄性と富栄養性※7を活用した微細藻類の大量培養技術や無菌培養技術の研究を進めました。2013年、東京⼤学⽣物⽣産⼯学研究センターとの共同研究で、海洋深層⽔を活⽤した微細藻類の⼤量安定培養技術を確立しました。また、藻類の波長に応じた独自のLEDの開発もメーカーと行い、現在特許を共同出願中です。
※6 藻類のうち1ミリメートルから1マイクロメートルほどの大きさである植物プランクトン。微細藻類は光合成で有機物を生産して、水圏の生態系における食物連鎖の基盤を担っており、上位の栄養段階の生物に栄養を供給している。
※7 沖縄県久米島の海洋深層水の水深は612m。光も届かず、植物プランクトン等による光合成が行なわれないため、栄養塩が消費されない結果、ケイ酸態ケイ素、リン酸態リン、硝酸態窒素などが多く含まれています。
世界初!牡蠣の完全陸上養殖に成功
国内外で陸上での種苗採卵や、稚貝と呼ばれる1~3cm程度までの生育は行われていますが、その後は海域に移動し生育されています。これは、稚貝以降の成貝までの生育に必要な大量の餌となる、微細藻類の培養が困難なことが大きな要因だからです。
GOファームでは、微細藻類の大量安定培養技術、及び完全陸上で成貝まで成育させる飼育技術を確立したことにより、この度、ノロウイルスフリーの「あたらないカキ」の養殖が実現しました。
これにより、これまでリスクが高いとされていた牡蠣に、確実な安全性をもたらすことができました。※8今後、この「あたらないカキ」を「8TH SEA OYSTER 2.0」と名付けて、ブランド化を図ります。既に本技術は牡蠣の陸上養殖方法として特許を取得しています。(特許第6267810)また、海外においても台湾、中国、米国の3か国にて取得済み、1か国は出願審査中です。
※8 外部検査機関における自主ノロウイルス検査実施済
今後の展開
今後はIoT技術などを駆使した量産化施設の建設を想定しています。量産化に向けたファーストステップは、年間数十万個、その後のセカンドステップでは年間数百万個の生産を想定しています。現在も世界中で、リスクの高い牡蠣の取扱いを敬遠するホテルや百貨店、レストランなどが多数あります。職業上、牡蠣の喫食を控えなければならない方も多くいます。
ノロウイルスフリーの完全陸上養殖の「あたらないカキ」「8TH SEA OYSTER 2.0」の流通により、オイスターの生食文化を守っていきます。今後、「あたらないカキ」「8TH SEA OYSTER 2.0」の登場で、新たな食の楽しみが世界中に拡大しそうですね。
会社概要
2000年創業、2016年より株式会社ゼネラル・オイスターへ商号変更しました。「オイスターの未来を創り、食文化の進歩発展に貢献する」という企業理念のもと、牡蠣を主体とするレストラン・オイスターバーを経営する直営店舗事業と、安全性の高い牡蠣を安定供給する卸売事業、安全性の原点となる種苗生産・養殖事業を展開。
全国に26店舗のオイスターバーを展開し、陸上養殖実験施設(沖縄県)、浄化施設(富山県)、加工工場(岩手県)等で事業を推進。牡蠣ビジネスの6次産業化を確立し、一貫して安全性の高い高品質の牡蠣を提供しています。未来の牡蠣、先端をいく安全性を追究し続けています。
社名:株式会社ゼネラル・オイスター
代表者:代表取締役社長 吉田秀則
所在地:東京都中央区日本橋茅場町2丁目13番13号 JRE茅場町二丁目ビル7階
設立:2000年4月3日
<河野陸/TSURINEWS編集部>