【一名生還も一名は行方不明】江の島で同日に釣り人の海中転落事故が2件発生

【一名生還も一名は行方不明】江の島で同日に釣り人の海中転落事故が2件発生

令和4年9月、湘南エリアの人気観光スポットである江の島で、釣り人による海中転落事故が同日に2件発生。1件は生還、もう1件は未だ行方不明と明暗を分けた。編集部では、事故を担当した海上保安庁担当者へのインタビューを実施。釣り人による落水事故の実態に迫る。

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海上保安庁担当者へ取材

同日同ポイント(江の島内)で発生した2つの落水事故のそれぞれの概要について、湘南海上保安署の相澤氏から話を聞いた。

【一名生還も一名は行方不明】江の島で同日に釣り人の海中転落事故が2件発生湘南海上保安署の相澤氏(撮影:TSURINEWS編集部)

事故当時の天候、海況は?

当日は朝から晩まで晴れていましたが、北北東の風が10m吹いており、北北東のうねりも入っていて、波高は1m、気温は約20度、海水温は25度ぐらいでした。海水温25度は暖かく感じるかもしれませんが、実際に海に入るとかなり冷たく感じると思います。波高も1mですので、事故発生現場である江の島の磯場は、足元をずっと洗っている状態だったはずです。

事故が起こった場所は?

釣り人の人気スポットで、稚児ヶ淵と呼ばれている場所です。ここは海抜高もそれほどなく、広い岩場が連なっているのですが、先端部で釣りをしていた場合、大きな波が打ち寄せるとすぐに逃げるのがむずかしい場所でもあります。

【一名生還も一名は行方不明】江の島で同日に釣り人の海中転落事故が2件発生事故現場となった稚児ヶ淵の磯場(撮影:TSURINEWS編集部)

1件目はどんな事故?

1件目の事故は無事生還したケースで、5時半ごろに江の島を訪れて、釣りのポイントを探して歩きまわっているうちに高波を受けて海に転落してしいました。この方は江の島の磯場での釣りは初めてだったそうで、周りの釣り人にポイントを聞いているときに足元を洗う波を受け、正面からきた波は耐えたものの、回り込んだ波を後ろから受けて尻もちをつき、落水しました。

2件目はどんな事故?

2件目の事故は、18時ごろに友人と二人で磯場に来て、20時ぐらいから釣りを開始。目撃者の証言によると、20時40分ぐらいに波にさらわれました。この方たちは、自分たちの足元がつねに波で洗われている状態にもかかわらず釣りを始めたそうで、現場には彼ら二人しかいませんでした。しかも二人は離れて釣りをしていて、周りの人も「危ないな」と見ていたそうです。

落水された方は、打ち寄せる波を受けて後退りするように転倒、尻もちをついた状態で引き波にさらわれたと聞いています。通報を受け、警察、消防とともに捜索しましたが今日現在、残念ながら行方不明のままです。

【一名生還も一名は行方不明】江の島で同日に釣り人の海中転落事故が2件発生多くの釣り人が訪れる人気ポイント(撮影:TSURINEWS編集部)

明暗を分けた要因は?

大きな違いは、落水後です。1件目の釣り人は、ライフジャケットを着用していて、落水後に磯場を見上げたら周りの人が電話しているのを確認。磯場に寄ると波で打ちつけられケガをしてしまうと判断し、意図的に少し離れたところで浮いて待っていたそうです。

そうしたら、周りの釣り人がちゃんと通報してくれて、さらに付近を航行しているアウトリガーカヌーを楽しんでいた方に救出要請。その方がレスキューし、事なきを得ました。一方、2件目の釣り人はライフジャケットを着用していおらず、落水後、直立した状態でバタバタ暴れていて、5分ぐらい経ったころには目測でおおよそ50mぐらい流され、暗闇に姿を消してしまいました。

ライフジャケットの重要性

両者の明暗を分けたのは、ライフジャケットの着用、未着用が決定的な要因だと考えています。とくに1件目のケースは、当事者が非常に冷静だったのですが、それもライフジャケットを着て浮いてられるという安心感が大きいと思われます。発生時の時間、天候や海況なども少なからず影響したでしょうが、最終的にはライフジャケットの有無が明暗を分けたと言えるでしょう。

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