投げ釣り愛好家が伝えたい【釣り場で出会った3つの「ありがとう」】

投げ釣り愛好家が伝えたい【釣り場で出会った3つの「ありがとう」】

釣り場では魚だけではなくいろいろな人との出会いもある。今回は私が過去に釣り場で出会った方々とのエピソード、特に「ありがとう」と言いたくなったエピソードを三つ紹介したい。

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター牧野博)

アバター画像
牧野博

初めて投げ竿を持ったのはもう50年近く前、関東で就職してからクラブに入会し、投げ釣りの面白さに魅了されました。根掛かりの多い砂地の磯場や河口内でわざわざ引き釣りをするという特異な習性があるほか、秋にはヘラ竿を持って汽水域を徘徊することもあるようです。

×閉じる

海釣り 投釣り

3、通りすがりの見物の人とのできごと

約50年前にさかのぼる。これは今の時代だとちょっとありえない話かもしれない。

冒頭に列車の釣り人の話をしたが、そのころ小学生だった私は、父に連れられて初めて投げ竿を振ったのである。ある時、父と北陸方面に釣りに行くことになった。北陸線は幹線なので、当時下りの富山、直江津方面に向けて特急・急行の定期の夜行列車が合わせて5~6本は出ていたと思う。大阪市内でエサの調達に少し手間取り、最終の夜行急行に乗り込み、小松駅で降りる。まだ未明で、駅のホームの待合室のベンチで少し仮眠した。明け方、タクシーで釣り場に向かう。ポイントがどのあたりだったかは覚えていないが、投げ竿を3本位出した。

なんだか雲行きが怪しい。一応カッパは着ているが、パラパラと雨がこぼれてきた。そのとき、スーツ姿の男性二人が見物に来られたのである。医薬品の営業マンの方で、クルマで外回りをされていたようだ。父が少し話をしていたが、よかったら駅まで乗っていきませんかと言ってくださった。仕事中で申し訳ないがライトバンに同乗させていただく。このときは本当に助かった。父は駅で降りたときに少し待ってもらい、駅の売店で缶コーヒーやお菓子を買ってお礼に渡したようだ。

今の時代、社用車に部外の人を乗せて営業ルート以外の場所に行くなどは、まずできないことだと思う。営業マンの会社の名前などは全く覚えていないが、この時の営業マン二人に心から「ありがとう」と申し上げたい。

増やしたい「ありがとう」の場面

投げ釣り愛好家が伝えたい【釣り場で出会った3つの「ありがとう」】紀の川河口の釣り場風景(提供:TSURINEWSライター牧野博)

昨今、コロナ渦の釣りブームである。初心者やヤングのアングラーも徐々に増加してきている。趣味や娯楽が多様化した今、これはある意味注目に値することではないかと思う。それだけ釣りという世界に興味を持って見つめている人が多いのであるが、新世代のアングラーはポイントや釣りの方法などについて、まずネットから情報を入手すると思う。

しかし釣り場に出てその時、その潮回りや水温の状況で、釣果をあげてゆくには、ネットのポイント情報だけではなく、臨機応変に自分の釣りのスキルの中で対応してゆく必要がある。

釣り場のマナーなどに関しても同様で、私たちの世代が実際のフィールドで先輩から学んできたような機会が、新世代のアングラーには少なくなっているように感じる。例えば、先釣者がおられた場合、声をかけてから少し離れて釣り座を取ったり、投げ釣りでオマツリしてしまった時など、「すみません」と声をかけてゆっくり巻きながらお祭りをほどくなどのことがそうである。

場所によっては漁港が釣り禁止となるなど、漁業者とアングラーの間にもあまりよくない雰囲気が生まれているのも確かだ。しかしプロの漁業者の方々は、決して我々アングラーを敵対心で見ているのではない。実際、海の様々なことを尋ねてみると、とても親切に教えてもらえると思う。

釣りはバーチャルの遊びではなく、海洋や河川という実際のフィールドで手足や頭を働かせて楽しむレジャーである。そこには、同じ場所を仕事場にしているプロもいる。地域の方々もいる。そこで少しずつ「ありがとう」の場面を増やして行くことができれば、アングラーにとってもより快適に釣りが楽しめるようになると思うのである。

<牧野博/TSURINEWSライター>