冬の日本海を代表する高級食材・ズワイガニ。沿岸各県で水揚げが始まりましたが、明暗がくっきり分かれているようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
各地でズワイガニ漁が解禁
日本海側の各漁港で11月に入って、冬の最重要漁獲物と言える「ズワイガニ」の漁が相次いで解禁されました。水揚げのあった漁港では初セリも行われ「赤い宝石」の水揚げで市場は賑わいを見せています。
ズワイガニやベニズワイガニの水揚げで有名な富山県射水市の新湊漁港で行われた初セリでは、雄の平均浜値は昨年よりも3割高、「コウバコガニ」と呼ばれる雌も1割高となっており、関係者からは例年以上の需要が期待されています。
ズワイガニは、水揚げされる地域や漁港ごとに「越前ガニ」「松葉ガニ」「加能ガニ」といったブランド名がつけられており、この地域における冬の観光資材として欠かせない存在となっています。
豊漁と不漁の明暗分かれる
初セリが一斉に始まった一方で、水揚げについては地域ごとに明暗がくっきりと分かれる結果になりました。
鳥取県の「松葉ガニ」の初水揚げは、不漁と言われた昨年よりさらに少なく、3分の1ほどになっています。資源保護のための漁獲割り当ても、ズワイガニ全体で796tとこれまでで最も少なくなっています。
「浜坂ガニ」が水揚げされるお隣兵庫県新温泉町の浜坂漁港では、型こそ大きいものの数は少ないようです。漁師は「今がどん底、1~2年後から回復するというのでそれに期待」と語っています。
一方で福井県の「越前ガニ」は豊漁。県水産試験場の漁獲量予測は、昨年度より雄は5~15%、雌は10~20%増と大幅な上昇が見込まれており、解禁1週間ですでに漁獲枠上限が見えてきている状態だといいます。
なぜ地域ごとに差が?
日本海のズワイガニは長らく、乱獲による資源減が指摘されてきました。そのため福井県では2013年度より自主的に厳しい禁漁制度を導入し、県沖海域のズワイガニ資源を守ってきました。今回の豊漁は、それが実を結んだものと考えられています。
加えてデジタルによる資源保護技術も活用。網にかかった稚ガニの数をオンラインデータにまとめることで漁業者間で共有し、稚ガニが多くかかった区域での操業を中止することで漁場を守ることにつなげています。
デジタルの活用で適切な禁漁区、禁漁期間を設定する技術は、ズワイガニに限らず、漁獲の先細りが指摘される我が国の漁業において救世主になるのではないかと考えられています。福井の成功を踏まえ、ほかの地域にも広がっていくかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>