外来種問題が深刻化している多摩川で、今最も悪い意味で注目を集めているのが「藻」。一体どんな問題があるのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
多摩川で繁茂する「外来種の藻」
いまや全国各地で喫緊の課題となっている「外来種問題」。中でもより閉鎖的で駆除の難しい「内水面(河川や湖、池沼)の外来種」については、たびたびニュースで取り上げられるようになっています。
そんな内水面の外来種で今注目を集めているのが「ミズワタクチビルケイソウ」です。ここ数年、東京都内を流れる多摩川で発生が確認されてきましたが、今年も東京都青梅市で繁茂していることを、同市にある奥多摩漁業協同組合が発表しました。
このミズワタクチビルケイソウは北米原産の藻類で、国内では2006年に初めて確認されました。大分県の筑後川上流で見つかって以降、中部、甲信越、関東、東北にて発生が見られています。
どんな影響があるのか
ミズワタクチビルケイソウは0.1mm程度の微細な藻類で、繁茂すると湿った綿のようなモヤモヤとした群生を作ります。これが河床に大量発生すると、餌となる藻類の成長が阻まれた結果、大事な河川資源であるアユが育たなくなる恐れがあります。
実際、少量でもミズワタクチビルケイソウの繁茂が見られる場所は、アユの定着率が悪いと言われています。さらに本来の藻類が生えにくくなった結果、それを餌とする水生昆虫の発生も抑えられてしまうため、それらの虫を餌にする魚の成長に影響する恐れもあるそうです。
これらの結果として生態系を土台の部分から揺るがしてしまうこともありえ、藻類といえども非常に厄介な存在なのです。その他、漁網や釣り糸にかかることで邪魔者になるという物理的な被害も報告されています。
川遊びのあとには「塩か熱湯」
このミズワタクチビルケイソウのような外来藻類は、釣り具や網、長靴、ウェーダーなどに付着した状態で水域の外に脱出することができます。
仮にその後、それらの道具に付着した藻の殺藻処置をすることなく他の水域で使用すると、その勢力拡大に一役買ってしまうおそれがあります。そのため発生が確認されている地域では、道具の殺藻処置を行うことが盛んに呼びかけられています。
ミズワタクチビルケイソウに関しては塩分に弱く、5%食塩水に1分浸すことで殺すことができるそうです。また高温にも弱く、60℃以上のお湯に1分以上浸漬することでも殺藻可能とのこと。もっと簡単な方法では、アルコールスプレーをまんべんなくたっぷりかけるのでも良いそうです。
一度侵入した外来種の根絶は難しいことが多いのですが、それが目に見えないサイズの藻であればなおさらです。まずは生息域を拡大させないことが重要であり、面倒でも必ずこのような処置を行うよう心がけたいですね。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>