水の中で穏やかに漂うイメージのある「水草」。アクアリウムのお供としても欠かせない存在ですが、実は今、日本中で「危険な水草」が大増殖し問題となっています。
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外来生物の水草「オオフサモ」
兵庫県明石市にある「明石公園」。大正時代に開園された歴史のある公園ですが、ここにある「乙女池」で現在、特定外来生物の水草「オオフサモ」が大増殖してしまい、除去作業が行われています。
オオフサモはここ数年で急速に数を増やしており、水面を覆い尽くしてしまうほど。庭園風景を一変させてしまった上、エビやヤゴなど水生動物のすみかを奪うなど、生態系にも大きな影響を及ぼしていました。
オオフサモは南米原産の多年生の植物で、日本には観賞魚向けの水草として移入され、定着したとみられています。温暖な気候を好む植物ですが耐寒性もあり、日本の冬の寒さの中でも枯れずに越冬することができるといいます。
明石公園ではたった約2年で、約1,000万平方mの水面を緑一色に覆うほどまでに繁茂してしまったそうです。このまま野放しにすると、生態系が破壊され、明石公園の景観が失われてしまうため、除去が行われることになりました。今後は乙女池以外のため池でも観察を続け、繁殖の食い止めを図っていくとのことです。(『水面が緑一色「外来生物」オオフサモの除去着手 数年で急速に繁茂、庭園風景を一変』神戸新聞 2021.5.12)
「水草」とはどのようなものか
「水草」はとても一般的な言葉ですが、そこには非常に多種多様の種類が含まれます。定義的には、被子植物やシダなど一度陸上生活に適応した植物群のうち、再び水中に適応したものを指します。
我々ヒトの生活に欠かせない水草も少なくなく、スイレンなどアクアリウムの一部として愛されるものがあるほか、クワイやハス(レンコン)のように食材として役立つものも多いです。
水草の中には、きれいな水を好み環境適応性が低いため、絶滅が危惧されているものが少なくありません。しかしその一方で、近年は外来種も多数報告されるようになっています。
特定外来生物指定の水草も
オオフサモのように、日本の環境に適応し急激に増殖している外来水草はいまやかなりの数にのぼります。
その代表例として知られるのが、近年熱心な駆除が実施されているブラジルチドメグサです。西日本の河川や池沼で大繁殖しているこの水草は、その強靭な生命力であっという間に定着し、茎を張り巡らせて他のあらゆる生物が入ってこれない環境を作ってしまいます。その侵略性の高さから「特定外来生物」にも指定されています。
またその他に「ホテイアオイ」も厄介な外来種として知られています。葉柄に気泡を持ち水面に浮かんで育つこの水草は、花が美しく、また水質浄化に貢献するとして広く移入されました。しかし繁殖力が高く、一度導入されるとあっという間にその水域の水面を埋め尽くし、水中環境を悪化させてしまうのです。
これらのように、観賞用として持ち込まれ、自然界に逸出してしまう外来水草はとても多いと言われます。湿地帯や水中に生える水草は機械での除去が難しく、一度繁茂すると多くの場合はマンパワーで引っこ抜いていくしか方法がないため、その除去は困難がつきまといます。
外来水草は「きれいだから」程度の理由で容易に移入するべきではない存在なのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>