毒生物として恐れられるだけでなく、磯焼けの原因生物としても目されるガンガゼ。各地で駆除が行われていますが、じつは食べることも可能です。
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三重県でガンガゼを一斉駆除
三重県中部にあり、全国でも有数の海女漁の盛んな街・志摩市。しかし、海女漁の主要漁獲物であるアワビやサザエはここ数年にわたり恒常的な不漁が続いています。
今年は特にひどく、アワビの漁獲量は前年の半分以下、サザエに至っては4割程度と、例年よりも更に減っているのだそうです。
そんな中で先月、不漁の原因と目されているウニの一種「ガンガゼ」の駆除が行われました。漁師や海女ら約20人が海中に潜り、岩場に生息する「ガンガゼ」を専用の道具で一つ一つ砕いていくという作業を行いました。
志摩市の担当者は「効果を検証しながら来年に向けて進めていきたい」と語っているそうです。(『アワビやサザエの天敵を退治 エサになる海藻を食べつくす「ガンガゼ」の駆除作業 三重』CBCテレビ 2022.6.21)
ガンガゼと磯焼け
なぜウニの一種であるガンガゼがこれらの漁獲物の不漁を引き起こすのかというと、彼らが「磯焼け」という現象を引き起こすからです。ガンガゼは海藻を蚕食するため、沿岸域の海藻が食べ尽くされてしまって「藻場」がなくなり、まるで砂漠のようになってしまうのです。これを磯焼けと呼び、そのような場所に生息するアワビやサザエの資源量が減少していきます。
現在、志摩市に限らず、南西日本各地の沿岸でガンガゼは増えており、海藻の食害も発生が増えている状況にあります。ガンガゼは他のウニよりもトゲが長く、更に密集して生息する特徴があり、これを捕食する「天敵」があまり多くありません。そのため他のウニよりも磯焼けを起こしやすいとも言われています。
一方で、ガンガゼがこれほど急に増えているのは、海洋温暖化が一因とされています。海洋温暖化が起こると、アイゴやイスズミといった海藻を食害する魚も増えるため、ガンガゼだけに磯焼けの責任を負わせるというわけにはいきません。
さらに、各地で起こっている磯焼けの中には「開発による土砂の流入」が原因であるものも多くあります。磯焼けイコールガンガゼのせいとするのは早計であり、またガンガゼが増えているのも間接的に人類のせいということができるかもしれません。