日本人が最も目にする機会の多い魚・コイ。養殖や放流が盛んに行われてきたことの賜物ですが、しかし現在においてはその放流は「慎むべきもの」という認識となってきています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
法令とのギャップ
しかし残念ながら、今回のようなコイの放流は今も全国各地で行われています。それだけ前記の「コイがいる川は清流」「コイが泳ぐ理想的な川」というイメージは強いのでしょう。
またそれだけでなく、放流を行わないといけない理由がある地域もあります。我が国の法律では「漁業権魚種は殖やす努力を行わないといけない」ことが規定されているため、コイが漁業権魚種として指定されている地域ではルールに従って放流されています(コイヘルペスウイルスの問題もあったため、放流量自体は減っていると考えられますが、放流の義務は残っています)。実情に対し、法令が追いついていない状況だといえるでしょう。
イメージの問題も
コイはブラックバスやブルーギルと行った特定外来生物と比べて「環境を悪化させる外来魚」としてのイメージは弱く、それが「コイの放流が無くならない」最大の理由だと考えられます。
放流を行う人々は「良かれと思って」やっているはずで、それを責めるのはかわいそうな気もします。しかし行っていることはれっきとした環境破壊行動であり、「良くないことなのだ」という認識が広まっていかないといけません。今後メディアでも「コイの放流が行われたが、問題だ」という論調の報道が増えていくことを願いたいと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>