ニュージーランドで「怪物」という名のつけられた魚が水揚げされました。日本近海にも生息するというこの魚、一体どんな味がするのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
「ギンザメ」の赤ちゃんが話題
ニュージーランドで水揚げされたとある「深海魚」がいま話題となっています。
深海生物の調査船によって、ニュージーランド南島沖合の水深1200m前後から水揚げされたのは「ギンザメ」の一種の稚魚。軟骨魚類であるギンザメの仲間は世界中の深海(一部浅海)に生息していると言われていますが、その生態は謎に包まれています。
今回、ギンザメの稚魚が見つかったことから、その謎の生態に研究のメスが入るのではないかと期待されています。
「幻影の怪物」と呼ばれる魚
ギンザメという魚の最大の特徴は、その見た目のユニークさにあるといっていいでしょう。まるで人面魚のような頭部に、タラの仲間のような後半身がついており、その見た目から「Chimaera phantasma(キマエラ・ファンタズマ)」という学名が付けられています。
キマエラとは、ギリシャ神話に出てくる「頭がライオン、体がヤギ、尾が蛇」の怪物。いくつもの生き物を合わせたようなその姿は、物語だけでなく、生物学上の表現としてもしばしば用いられます。
ファンタズマは「ファンタジック」つまり「幻想的」という意味。そのため学名を直訳すると「幻影の怪物」ということになり、非常にカッコいいです。
そのお味は?
ギンザメはサメやエイと同じ軟骨魚類の一種。サメと名付けられていますが、ふつうのサメと近縁ではないという説もあり、身質など食味の面についても少し異なる印象を受けます。
ギンザメやその仲間のムラサキギンザメは、我が国でもときに深海底引き網などで水揚げされ、食材として流通に乗ることもあります。しかし味の評価は一般的には低く、水っぽさがあるとされ、主にすり身に加工され練り物の材料となっているようです。
筆者は以前鮮魚店で見かけたことがあり、購入して食べてみたことがあるのですが、味はそこまで悪くありませんでした。水っぽいというより「水分が多くふわふわしている」といったイメージで、煮付けなど味を染ませる調理法で美味しく食べられました。
とはいえもともとあまり数が多くないと考えられる上、漁業における混獲でその数を減らしているという説もあり、食材としての活用法を考えるよりは混獲を防ぐ手立てを考えるほうが有益であると思われます。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>