魚の中でもトップクラスに奇妙な見た目と、見た目からは想像できない美味な身のギャップで知られるオニオコゼ。実は海だけではなく「山」とも関係の深い魚なのです。
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海の魚なのに「山の神」?
ところで、オコゼといえば切っても切り離せないものがあります。それは「山の神信仰」。古くから、山に登るものや山で仕事をするものは、オコゼの干物を携えるという風習が各地に残っているのです。
その理由については諸説あるようですが、いちばん有名なのは「醜い魚だから」というもの。山の神様にはイワナガヒメを始め「醜い女性」とされる神様が多く、オコゼという醜くも美味な魚を備えることで彼女たちの怒りを鎮める、という意味合いがあったと言われています。
また、そこから転じ、オコゼそのものを「ヤマノカミ」と呼ぶ地域も少なくありません。一方、九州山中の渓流には標準和名ヤマノカミという魚が存在しているので、もし九州で「ヤマノカミ」と言われたら、それが海のものか山のものかを確認する必要があるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>