愛知県で深海魚の化石群が発掘され、非常に注目されています。骨だけでなく筋肉や内臓まで残っており、とてもレアなケースのようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「ハダカイワシ」の化石が発掘
先月24日、愛知県南知多町の「師崎層群」から、珍しい化石が新たに見つかったと愛知県の学識者団体が発表しました。1800万年前の地層から発掘されたのは、およそ1800万年前のものと推定される「深海魚」の化石群です。
なかでも、ハダカイワシの化石は、特有の部位である「発光器」がはっきり残っているといいます。化石になることで消えてしまいがちな目や背中の黒い色合いも確認できるほど状態が良く、関係者の興奮を誘っています。
そのほかイワシやサバ、ウニなど約150点の化石が発見されており、今後、クリーニングをした上で、電子顕微鏡や化学分析で詳しく調べるということです。
ハダカイワシってどんな魚?
今回見つかった「ハダカイワシ」は代表的な深海性魚類のひとつで、現生種も多い種です。鱗が非常に剥がれやすく、漁獲されたときにはほとんど剥がれた状態になっているので「ハダカイワシ」という名がつけられました。
彼らは日中は水深1000mほどの深い場所に生息していますが、夜間は餌を追いかけて水面近くの浅い場所にまで浮上する「鉛直移動」を行います。そのため、相模湾や駿河湾などでは定置網に入ることもしばしばあります。
ハダカイワシの食材としての特徴は、全身にコッテリと脂が乗っていること。干物などで美味しいため、知る人ぞ知る珍味として取引されています。
世界的にも珍しい化石
今回化石が発掘された「師崎層群」は、1983年に行われた農業造成工事の際に発見されました。世界的にも珍しい「深海生物群集」で、ここがかつて深海の底だったことが推測されます。
師崎層群の化石は上記のハダカイワシのように、一般的に化石として残りやすい骨や歯といった部位だけではなく、残りにくいとされる筋肉や内臓などの軟体部が残っているのが特徴。そのため、世界的にもまれな保存の良い化石だとされ、世界的な注目を浴びているそうです。
かつてここで発掘された化石には、世界で初めて見つかった種もたくさんあり、ウニやサバなどが化石新種として報告されています。発掘に必要な資金はクラウドファンディングによって集められており、発掘された化石は市内の博物館などに収蔵され、深海生物の研究に用いられる予定だということです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>