奇怪な見た目に似合わず美味なものも多い深海魚。多くはまだ「未利用魚」ですが、徐々に脚光を浴びるものが出始めています。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
富山県で「新顔の深海魚」に脚光
国内でも屈指の深い湾である富山湾に面し、漁業の盛んな富山県魚津市。ここにある魚津漁協では、これまで利用してこなかった深海魚「ミズガンコ(ヤマトコブシカジカ)」の活用に乗り出しました。
ミズガンコは「世界で最も醜い生き物」と呼ばれたこともあるニュウドウカジカと近い仲間の魚で、ブヨブヨとしたゼラチン質の体が特徴です。9月から、漁協直営の食堂でみそ汁の具にこのミズガンコを使用しており、今後は市のふるさと納税の返礼品などでも活用していく予定になっているそうです。
魚津漁協は、ベニズワイガニ、バイ貝、ゲンゲなど深海の魚介類が魚津漁港で多く水揚げされることに着目。それまで水揚げされても利用されなかったミズガンコも活用しようとみそ汁に使ってみたところ好評。同食堂では今後、揚げ物や煮物にも使うことにしているということです。(『深海の幸「ミズガンコ」活用に着手 魚津漁協、みそ汁の具や返礼品に』北里・信越観光ナビ 2021.10.9)
活用される深海魚
ミズガンコは見た目こそ悪いものの、美味な種が多く含まれる「カジカ亜目」の一種。全身が柔らかく、ゼラチン質が豊富で質感がよく、肝が大きくて美味などといった食用に適した特徴を持っています。
このような特徴を持つ深海魚の中には、ゲンゲやトウジンなどのように食材として脚光を浴びるものがしばしば現れます。そういったものは「新しい美味!」として名物になり、地域おこしに利用されることも多いです。
深海魚には水っぽいものや脂が多すぎるもの、見た目が悪いものが多く、漁獲量の割に食材として脚光を浴びるものは多くはありません。しかし、サンマやスルメイカなどといった、主要な漁業種の水揚げがどんどん減少していく現状のなか「調理が容易で」「わかりやすく美味しいもの」は深海魚といえども食材として注目されやすくなっているのです。