ちょっと前まで庶民の味の代表だった「イワシ」。近年では値段が高騰して高級魚の仲間入りをしています。まもなく旬を迎えるイワシの面白い習性についても調べてみました。
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イワシってどんなサカナ?
まずイワシの定義を簡単に説明いたしますと「ニシンの仲間の小型のもの」となっています。
じつはイワシはニシン目ニシン亜目のサカナの総称で、日本ではマイワシ・カタクチイワシ・ウルメイワシの3種を総じて「イワシ」と呼んでいます。
ですので、ニシンとイワシは全く別のサカナだと思っている人も多いかもしれませんが、実は非常に近縁なのです。
イワシは昔からよく獲れるため安く、「卑(いや)しい」サカナであるとして、それが「イワシ」になったとか、魚へんに弱いと書くように、すぐに腐ってしまうため「弱し」から変化して「イワシ」になったなど、名前の由来は諸説あります。
世界中で生息するイワシ
イワシは泳力が強いため世界中の海で生息が確認されていますが、群れで世界中の「沿岸」を回遊しているため海に接している国のほとんどが漁業対象魚にしています。
当然「イワシ」と名付けられた魚は数多く確認されますが、日本の漁業的には前述の3種類のみを「イワシ」と位置付けています。
ちなみにロシア語ではイワシは「イヴァーシー」と呼ばれ、日本の「イワシ」が語源とされています。
貴重なたんぱく源
イワシは非常に栄養価が高いため、「海の米」や「海の牧草」とまで言われ、多くの魚のエサになっています。
日本でも以前までは安価で購入できる栄養豊富なサカナとして食卓には欠かせないサカナでした。
栄養素を見てみると、EPA、DHAという不飽和脂肪酸がたくさん含まれており、脂肪もたんぱく質も良質です。
また、カルシウムやビタミンDも獲ることが出来、まさしく栄養満点のサカナなのです。
近年は値段が高騰
一昔前までは低価格で購入することが出来たイワシですが、最近では非常に高価なサカナとさえれています。
その原因として考えられるのは大きく2点あり、1つはアジやサンマなどでも数年に一度あるような急激な漁獲量の減少です。漁獲量が減ることにより値段が高騰しやすくなってしまいます。
2つ目は以前よりも鮮度のいいものが出回るようになったことです。一昔前までは食卓に並ぶイワシはそこまで鮮度のいいものではありませんでした。聞こえは悪いかもしれませんが、イワシは鮮度の落ちるスピードが特に速く、食卓に並ぶころには生食では食べられなかったのです。
しかし、近年の運搬技術の向上により、スーパーで購入できるイワシでさえ生食が当たり前になってきています。鮮度のいいイワシは調理法も多く、どんな食べ方でも美味しくなるため、以前よりも需要が増え、価格が高騰していると考えられています。
食べる以外の用途も
イワシは食べるだけではなく様々な場面で使用されています。
食品で見てみると、例えば硬化油の原料の一つであり、マーガリン、ショートニングの原料として使用され、食品から少し派生させると、DHAやEPAなどのサプリにも用いられています。
また、工業的な場面では製革用油、重合油、ボイル油、低級塗料用油としても利用されています。
その他にも、養殖魚や家畜のエサにも使用されているため、私たちの生活に欠かせない存在だというのがお分かりいただけると思います。
イワシが群れる理由
イワシが泳いでいる姿を想像すると何百匹、何千匹にもなる群れで泳いでいるシーンを想像する方も多いと思います。
イワシが群れる理由はいくつかあり、まずは捕食者である大型のサカナに「自分よりも大きなサカナだと思わせるため」というもの。しかし、普段からイワシを追いかけているサカナたちにとってはそう簡単に騙されるわけもないので、この説は最近ではあまり信憑性が無いともいわれています。
一番有力だとされているのが、自分が捕食される確率を下げる「希釈効果」の為だというものです。一匹一匹で泳いでいると狙われた際に逃げることが出来ないため、群れを作ることで狙いがつけられず、捕食されにくくなるのです。
そのため、大きな群れの外側にいるサカナはどんどん内側に逃げ、外側に出てきてしまったサカナはまた内側に逃げる……これを繰り返すことで、群れはどんどん球体のようになります。
そのためこの状態になった群れは「イワシボール」と呼ばれています。