万年初心者のミステリー小説家が解き明かすフライの謎と秘訣。今回の「フライお得帖」は、若干16歳が「偶然に?」考案することになった『ティニーニンフ』の格安自作方法を紹介。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター浅暮三文)
フェザントテールは雉の羽
フェザントテールこと雉の尾羽根は役立つタイイング材です。このフェザントテールを使ったフライの名鉤にティニーニンフがあります。米国のジム・ティニーが考案したもので、鱒釣りからサーモン釣りまで幅広く使われているフライです。
タイイングは簡単。ただぐるぐる巻きにするだけ。レッグをひとつ付けるタイプと二つ付けるタイプがありますが、今回は二つ付けるタイプに挑戦しましょう。
ティニーニンフ誕生秘話
ジム・ティニーがそのフライを巻いたのは若干16歳、なんと中学三年生のこと。前年、オレゴンの湖へ鱒釣りの旅に連れて行ってもらい、そこでジムはかなりのサイズの大物たちを見たのです。
しかしジムはそれらを一匹も仕留めることができませんでした。というのも当時、ジムはタイイングを始めたばかりで二、三種類のオーソドックスなパターンしか巻けなかったのです。よくあるそんなフライに大物たちは見向きもせず、ジムは鼻であしらわれるばかり。くやしい、つらい、いっそこのままと思ったかどうかは分からないですが、ええいとばかりにジムは次回の釣行に向けてオリジナルのフライを巻いてみる一大決心に至ります。
自分でフライを考案するなど平凡なパターンしか知らない16歳にとっては徒手空拳とも思える挑戦です。ジムが父親のフライ材から選んだのはフェザントテール。友人が同じ材料でフライを巻いたと聞いていたからです。
だがジムのつたない技術では複雑なフライは巻けません。結果、仕上がったのはニンフフライらしきもの。それでもそのオリジナルフライを持ってジムはオレゴンに向かいました。そしてオーソドックスパターンが見限られるばかりなので、果敢にも例の大物たちにオリジナルを投げ入れ、なんと釣り上げたのです。
まさに棚ぼたといえますが、歴史の歯車はときおり、このようも偶然とも思える幸運をもたらすことがあるのでした。しかし実は、ジムのオリジナルには大物が食いつくそれなり理由があったのです。
ティニーニンフの特徴
ポイントはレッグの長さと全体とのバランス。ドライフライが水面にうまく浮くことを目指すように、ニンフも水中でちょうどよく流れるようにします。そのためティニーニンフのレッグの長さを考慮した量のフェザントテールを使用します。
オリジナルのティニーニンフはボディに対してレッグが長めで水中で水の抵抗を受けて表層からゆっくりと沈んでいきます。一つ目のレッグは鉤の後ろ半分に届き、二つ目もお尻ぐらいまでの長さがあります(ネットでジム・ティニー社の物を調べてみてください)。こんなレッグは水流を受けて動き、鱒にアピールするのです。
私はニンフフライの重要な点を「(1)サイズ、(2)質感(色=鱒にアピールする昆虫っぽさ、スタイル=昆虫っぽい記号・形状とフライの硬軟=鱒がくわえたときの感触)、(3)動き=水中での流れ方」と考えています。この色と質感、動きのすべてを単純ながら備えているのがティニーニンフなのです。
巻き方
それではティニーニンフのタイイングです。材料はハリ、ボディ材のフェザントテールのみといたってシンプル。フェザントテールは以前にフェザントテール・ニンフを巻くときに入手してあります。ハリはストレートのものや、ややアールのあるニンフ用でもよいのですが、今回は大きく巻くために管付きチヌ2号(フライフックで14#程度)を使いました。
工程1
フックに下巻きをしたあとフェザントテール(先端をレッグに使うので根本の部分)をハリの曲がり口に巻き留め、真ん中辺りまで巻いて残った先端をレッグとして巻き留める。
工程2
同様にフェザントテール(先端をレッグに使うように)を巻き留め、ソラックスになるようにややぼってりとアイの方へ巻いていく。アイの後でフェザントテールの残った先端部分をレッグとして巻き留め、ヘッドを作って完成。
※私の完成品がレッグの最適値とは限りません。いろいろと試してみることをお薦めします。