そのコミカルな見た目から愛されているイカ・タコの「頭足類」。最近ではその頭の良さに注目が集まり、様々な研究が行われています。
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イカに自制心があることが実験で判明
「スミイカ」や「モンゴウイカ」といった重要食用種が含まれるイカの1グループ・コウイカ類。このコウイカ類に含まれるとあるイカが、最近の研究により「自制心を発揮する」ことができると判明し、話題になっています。
ケンブリッジ大学心理学科の教授が、認知能力の発達を観察するために、人間の子どもに対して行われる「マシュマロテスト」とよばれる実験と同じようなことを、このイカに対して行ったそうです。イカに対して「エビのかけら」とそれよりもっとおいしそうな「生きたエビ」が提示され、彼らがエビのかけらをすぐに食べるのを我慢できれば、より美味しい生きたエビを食べることができる、という内容の実験でした。
すると、どの個体も50~200秒の間、エビのかけらを食べるのを我慢することができたのだといいます。この結果からわかるのは、コウイカはチンパンジーやカラス、オウムなどの動物と同じように、衝動をコントロールできる可能性があるということです。(『イカに自制心があった…「損して得を取る」ことができると実験で明らかに』BUSINESS INSIDER JAPAN 2021.3.7)
イカはどれくらい頭が良いのか
イカの中でも特に知能が高いと言われるコウイカ。彼らの知性については、度々研究対象となってきました。彼らは周囲の状況を判断し、皮膚の色素細胞をコントロールして、体色を変えて敵から逃れたり、餌を騙したりすることができます。
またコウイカは数の感覚を持ち、餌の数の違いを見分けることができることも、別の実験により判明しています。ただそれでも今回のような「自制心」と呼べる判断力が霊長類以外で確認されたのは初めてといい、生物学上大きな発見となる可能性が高いです。
頭足類の特徴は「発達した眼と脳」
イカと同じく「頭足類」というグループに含まれる生き物に、ご存知「タコ」がいます。このタコも、イカに負けず劣らず非常に頭が良いことで知られます。
彼らがその腕を器用に用いて、スクリューキャップやコルク栓で閉められた瓶のふたを開け、中の餌を取り出すことができるのは有名です。また最近の研究により、彼らには「鏡像認知能力」があり、鏡に写った個体が自分であることがわかるだけの知能があることも判明しました。
頭足類の最大の特徴は、その眼と脳にあると言われています。彼らの眼はヒトの眼と構造上とても近く、たくさんの情報を取り入れることができます。また、ほ乳類と同じレベルの巨大な脳も有しており、眼から取り入れた莫大な情報を処理できるだけの力もあります。
その発達した知能から「海の霊長類」と呼ばれることもある彼ら。1~数年という非常に短い寿命しか持たない彼らが、なぜこれほどの知能を持ち得たかという理由はまだはっきりとはわかっていないそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>