透明感の増す海中から海面へと浮上するチヌの舞いは、大型であればあるほど、ゆっくり首の一振りにも重みがあり、迫力感が増す。さあ、出かけよう。寒さを耐え抜いた先にある感動を求めて。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース西部版 APC・南健一)
釣り仲間と実釣へ
人間として釣り師として生きていくゆえで喜怒哀楽を共にしてくれる、分かち合える仲間が必要だろう。良き時代の若い釣り師、情報交換をしあい、SNSや動画などを見ると、磯に行った気分になり、楽しくもあり、うらやましくもある。
さて、本題に入ろう。田中信さんとの釣行だ。「明日、どこに行く?」連絡を入れると、「2番川」「了解」。このごろ田中さんとの釣行が多い。若い時はライバルとして競い合う釣りもしていたが、お互い余暇の時間ができて気が合う。
彼とは4つ違いの先輩だが、年を取ればそんなの関係ない?すごい経歴の持ち主で若い時など足元にも及ばなかったが昔から馬が合い、仲が良かった。それでもしばらく連絡が途切れていたが何かのはずみで再開。私はクラブ員を32人ほど抱えていたので忙しかったこともある。
みんなでサオが出せて充実した釣りをして、自然との勝負。釣りは遊びである。頭を使う勉強であり、良い仕掛け、知識を学び取ることもできる。田中さんはよくしゃべる男であり、チヌ釣りの理論があり、理にかなっている。
洞海湾で最大55cmチヌ
朝、タナを測り、オキアミのブロックから取るつけエサは赤味を帯びたオキアミより白っぽいものを選ぶ。朝の水温、昼の水温、夕方の水温も測る。タナをよく変える。まきエサの打ち方もウキとは反対の所に打ったりもする。尋ねると次の仕掛けの投入する位置に備えて潮の流れを把握して打ったと言う。体に染みついた理論だ。私が初心者だと思ってアドバイスをくれる。
さて、北九州・若松・洞海湾の2番川は、2人でポイントを探して、たどりついた場所。佐々野さんの協力もあって3番川とともにサオが出せる釣り場になった。それからは私のグループと田中さんのグループで攻め、1か月半で80尾のチヌが釣れた。
ここは東向きのポイントなので冬の北西風には風裏となる。タナは満潮で2ヒロと浅いので、掛ければ浅い分よく走る。下は砂地で今の季節はまったりとしてベタナギ。沈瀬や障害物などもなく、半端なく勝負ができる。大きなのは田中さんが釣った55cm。数は私、貝島さん、西村さん、中村さんが釣った計13尾で最大は48cmだった。
ベタ底で拾い食い
越冬場所とは考えにくく、すべてがその周辺にいる移動チヌだと思われる。冬のチヌ釣りはタナとまきエサの打ち方だ。底から20cm切ったベタ底。大潮回りの上げ潮で、潮が動いてまきエサがたまる場所。潮止まりの時はまきエサを一点に打ち込む。
ころころ変わる洞海湾の複雑な潮の動き、外海へと払い出されていく沖の流れ、底にたまったまきエサが潮に押されて動く。沖に向かって流れるウキがある程度流れ、止まる場所がある。そこがターニングポイントで、ウキがもぞもぞと押さえ込まれて消えていく。アタリはこの潮の流れ、このポイントで集中する。
田中さんの話では「持ち帰った人がチヌの腹の中を見るとムギだらけだった」とか。すなわち底に落ちた比重の大きいムギやコーンなどを底で拾い食いしているのだ。つけエサもそのまきエサの一部として食わせる。タナはベタ底、寒チヌの基本だろう。「南さん、最初にまきエサを打ったところが今日のポイントだからね」基本的な言葉だ……あくまでも私を初心者だと思っている。