氷に穴を開けて行う釣り方で有名なワカサギ。スーパーなどの惣菜魚として欠かせない存在ですが、実はしばしば2種の魚が混同されて売られています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ワカサギの穴釣りが解禁
福島県北塩原村の桧原湖と小野川湖で、1月25日にワカサギの穴釣りが解禁され、話題になっています。昨季は暖冬などの影響で湖が完全に氷結せず穴釣りができなかったため、解禁は2年ぶりのことです。
解禁日には待ちわびた穴釣りファンたちが集まり、凍った湖上に穴を開け、釣り糸を垂らしてワカサギを次々に釣り上げました。
今年は年末からの強い寒波の影響もあり、氷が一定まで厚くなったため穴釣りをすることが可能になりました。ただし、氷が薄い部分もあるため、釣り場を管理する各業者が指示する場所での釣りをするよう呼びかけています。桧原湖・小野川湖での穴釣りは、気候次第ですが例年3月下旬頃まで楽しめるそうです。(『銀盤に舞うワカサギ 桧原湖、小野川湖 2年ぶり穴釣り解禁』福島民報 2021.1.26)
ワカサギとは
淡水魚の中では例外的といってもいい、全国各地で当たり前に流通するワカサギ。
シシャモやアユと同じキュウリウオ科というグループに属する魚で、本来はやや冷たい水を好む魚です。天然分布域は、太平洋側は千葉県・茨城県以北、日本海側では島根県以北の北日本なのですが、食用魚としての価値の高さ故に全国各地に移植され、釣りの対象となってもいます。
ワカサギという魚の特徴は、「海に降る個体群と一生を淡水で過ごす個体群がいる」というもの。また大きくとも15cmほどの小魚ですが、水質の変化に強く、かなり水質の悪い湖でも棲息することができます。
ちなみに漢字で書くと「公魚」となるのですが、それはかつてワカサギが江戸時代に「年貢」として納められた歴史を持つためだそうです。
激似の「チカ」
このワカサギ、釣りの対象魚としてだけでなく、食材としても根強い人気を誇っています。そのため、全国の鮮魚店で普通に購入することができるのですが、その中でときに20cmを超えるような「ワカサギ」が売られていることがあります。
実はこのようなものの多くは、ワカサギに近縁で、より北方性の「チカ」という魚です。チカとワカサギは見た目がそっくりで魚屋さんでも混同してしまうことがあり、また関東以南ではチカという魚名が大変マイナーであることもあって、ワカサギとして売られてしまっています。
見た目だけでなく味も近いため「魚名偽装だ!」と問題になることは殆どないようです。ただし、チカのほうが大型なのでやや骨が固く、唐揚げなどまるごと食べる料理にするときはワカサギのほうが食べやすいでしょう。
一方でチカはサイズが大きめで、また海水魚なので生食や酢じめなどの料理を楽しむことも可能です(アニサキスには注意が必要)。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>