高級食材の「上海ガニ」を秋田で養殖 食用ではなく健康食品の原料に?

高級食材の「上海ガニ」を秋田で養殖 食用ではなく健康食品の原料に?

中華の超高級食材として知られる「上海ガニ」。日本の秋田県でも養殖されているのですが、なんとそれは食用ではないと言います。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

超高級食材・上海ガニ

中華を代表する高級食材・上海ガニ。秋から冬にかけて旬を迎え、「寒くなると食べたくなる」という食通も少なくありません。しかしその値段はなかなかのもので、大きくとも殻幅8cmほどのカニであるにも関わらず、旬には1匹数千円の値段がつくこともあります。

高級食材の「上海ガニ」を秋田で養殖 食用ではなく健康食品の原料に?店頭で売られる上海ガニ(提供:PhotoAC)

中国の経済力が上がるにつれ、一級品は日本で食べられなくなっているという話もあります。当地でもそのあまりの値段の高さのために産地偽装が行われたり、カニをお得に購入できるクーポンが発行されたりしているそうです。

ちなみに上海ガニは正式和名を「チュウゴクモクズガニ」といい、中国の淡水~汽水域に棲息しているのですが、その性質や見た目は、近縁種で日本に棲息する「モクズガニ」と非常によく似ており、味もそっくりです。モクズガニは身近な川にも数多く棲息しており、鮮魚店で購入できるほか、自分で簡単に捕獲することも可能です。我々庶民は無理して上海ガニを食べるよりは、モクズガニをお腹いっぱい食べるほうが良いかもしれません。

秋田で養殖が行われている

そんな上海ガニですが、実は今日本国内でも養殖が試みられています。

秋田県の内陸部に位置し、豊富な湧水ときれいな水で知られる美郷町。ここでは、2年前から上海ガニの養殖の研究が行われています。ビニールハウス内の人工池という環境下で、餌の種類や水温などを調整しながら生育状況を観察しているそうです。12月3日には、新たに1180匹の稚ガニが養殖池に放流され、ニュースとなりました。

しかし実はこの上海ガニの養殖研究は「食用のため」に行われているものではないのです。

「生薬」になるカニの殻

多くのカニの殻には、疲労回復に効果があるとされる「キトサン」という物質が多く含まれています。キトサンは生薬として古くから用いられているもので、これまでもカニなどの甲殻類の殻からキトサンが抽出され、健康食品等に活用されてきました。

今回の上海ガニも、このキトサンを効率良く集めるという目的のために養殖が行われているものです。上海ガニは繁殖力が高い上に脱皮の回数が多く、キトサンの原料となる殻がたくさん採取できるのだそうです。

高級食材の「上海ガニ」を秋田で養殖 食用ではなく健康食品の原料に?身だけでなく殻も有益(提供:PhotoAC)

この研究は、東京生薬協会と大手製薬会社のバックアップのもと実施されています。これまで放流したカニの生存率は約30%で、1454個の殻が集まったそうです。(『研究続く…上海ガニ1100匹を養殖池に追加放流 秋田・美郷町』秋田テレビ 2020.12.3)本格的な養殖事業の開始に向けてはまだまだ解決すべき事象も多いといいますが、関係者は期待を高めています。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>