岩手県で『ギンザケ』養殖が事業化最終段階 東京湾ではすでに事業化?

岩手県で『ギンザケ』養殖が事業化最終段階 東京湾ではすでに事業化?

知名度の高さの割に、どんな魚かよく知られていないギンザケ。実は、日本での養殖の歴史は意外と古いことをご存知でしょうか?

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久慈市漁協がギンザケ養殖に挑戦

我が国では代表的なリアス式海岸があることで知られ、風光明媚な入り江がいくつも連なる岩手県久慈市。現在ここでは「ギンザケ」養殖の事業化が計画されています。

岩手県で『ギンザケ』養殖が事業化最終段階 東京湾ではすでに事業化?久慈市の海(提供:PhotoAC)

主体となっているのは岩手県久慈市の漁業協同組合。漁網のメーカーなどと協力し、去年春から久慈湾でギンザケ海面養殖の実証試験を行っています。これまで「湾内での養殖が可能か」「冬を越せるか」などについて試験を重ねてきましたが、今期は2基に増設した生簀に、去年の7倍近い12万尾の稚魚を投入し、いよいよ事業化の可否を見極める段階に至ったそうです。

東北太平洋側ではこれまで主力魚種であったサケやサンマの不漁が続いており、代替の収入源になりうるものを求め、魚の養殖に挑む事例が増えているといいます。(『ギンザケ養殖試験 事業化へ最終段階/岩手・久慈市』IBC岩手放送 2020.11.6)

歴史あるギンザケの養殖

ギンザケ(銀鮭)はその名をスーパーで見かけない日はないほど流通量の多い魚で、日本の食卓には欠かせない存在です。しかし流通しているものはほぼ全てが輸入ものもしくは養殖もの。実はギンザケの棲息域は千島列島以北であり、日本にはほとんど棲息していないのです。

一方でギンザケはサケ類の中でも成長が早く、それにも関わらず身の味が良いことから日本でも古くから注目されており、養殖魚としても比較的古い部類になります。

岩手県で『ギンザケ』養殖が事業化最終段階 東京湾ではすでに事業化?人気が高いギンザケ(提供:PhotoAC)

我が国では1976年に宮城県志津川湾で初の養殖が行われました。その後海面養殖の技術が確立され、最盛期の1991年には27000tあまりが生産されました。その後は低価格なチリ産の影響を受けた低迷、また東日本大震災の津波で養殖場が壊滅的被害を受けるなどの困難もありつつ、現在も続けられているそうです。

実は東京湾でも養殖あり

ギンザケは量が多く安価なため、日本ではシロザケやベニザケの代用として昭和中頃より盛んに食用にされるようになりました。現在でも塩鮭にされ切り身で販売されるほか、コンビニおにぎりの具材としても欠かせない存在になっています。

岩手県で『ギンザケ』養殖が事業化最終段階 東京湾ではすでに事業化?生食用需要も高まっている(提供:PhotoAC)

そんなギンザケですが、驚くことに東京湾でも海面養殖が行われています。養殖を行っているのは、内房にある勝山漁業協同組合。

東日本大震災で国内のギンザケ生産量が激減してしまったことがきっかけで養殖が始められたといいますが、東京湾の水温はギンザケにとっては高すぎるため、実現にはいくつかの困難があったといいます。

そのなかで「水温が18℃以下になる12月頃にギンザケの種苗を生簀に入れ、低水温期である4月頃までに出荷可能な1kgサイズに成長させ、水温が再び18℃を上回る5月上旬までにすべてを出荷する」という手法が確立され、いくつかのテストを経て最終的に商業化に成功。現在では「江戸前銀鮭」の名前で流通し、高い評価を受けているのだそうです。(『東京湾で鮭?江戸前銀鮭知ってますか!』横浜丸魚株式会社 旬の食材ブログ)

この江戸前銀鮭は現在、関東の市場を中心に流通しているといいます。スーパーで見かけることもあると思うので、ぜひ購入してみたいですね!

<脇本 哲朗/サカナ研究所>