日本で親しまれている淡水の食用魚・ワカサギ。その主要産地のひとつ、秋田県の八郎湖でワカサギ漁が始まっており、豊漁が続いているそうです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
八郎湖でワカサギ漁が本格化
日本産の淡水魚では最も良く利用されているもののひとつ、ワカサギ。代名詞である「天ぷら」は学校給食でも定番メニューとなっており、全国的に親しまれています。
ワカサギの水揚げ高で全国3位となっている秋田県では、その最大の産地である八郎湖で、9月23日に本年度の漁が解禁されました。当地では「どっぴき漁」と呼ばれるワカサギ機船船引漁や、建網と呼ばれる定置網漁で盛んに漁獲されています。
例年10月になると本格化する八郎湖のワカサギ漁ですが、今年は解禁当初より連日豊漁が続いているそうです。(『八郎湖でワカサギ漁本格化 今年は豊漁で漁師が笑顔 秋田・八郎潟町』秋田朝日放送 2020.10.7)
豊漁の理由とは
昨年、八郎湖のワカサギは過去20年で最低の水揚げとなっていました。不漁の理由ははっきりしておらず、ワカサギの生息数が減った一方で同様の生態をもつシラウオが増えているなど、不可思議な点が多かったといいます。(『八郎湖のワカサギ漁、過去20年で最少 昨年・加工業者に打撃』秋田魁新報 2020.5.17)
一方、今年は日に150kgほどの水揚げがあり、これは去年の平均の15倍近い数値です。この豊漁の理由は、実は昨年の不漁と関連しているといいます。
昨年の八郎湖ではワカサギの個体数が少なく、それが不漁に繋がりました。その一方で個体のサイズは例年よりも大きかったことがわかっています。数が減った分1匹あたりの餌の量が相対的に増え、十分に栄養が取れ、大きく成長できたと見られるのです。
魚体が大きいと卵に十分な栄養がいきわたり、そこから孵化した稚魚も大きくなりやすく、生命力が強いそうです。結果として例年よりもワカサギの生存率が上がり、生息数が増え、好漁につながっているのだそうです。
ワカサギの美味しい食べ方
さて、ワカサギの料理といえばやはり「天ぷら」。とくに子持ちの天ぷらは非常に美味しく、人気が高くなっています。実はワカサギはシシャモと同じ「キュウリウオ科」に属する魚。そのため似たような風味があり、また卵の味も同様に良いのです。
そのほか、大型のものは素焼きでも美味しく食べることができます。生姜醤油との相性がよく、魚体が小さいこともあって何匹でも食べられます。
先述の八郎湖など、大量に漁獲される地域では古くから佃煮に加工されることが多かったようです。佃煮に向くのは骨の柔らかい小さな個体で、ほかにもかき揚げで賞味されます。
変わったところでは、関東の一大産地である霞ヶ浦では煮干し(釜揚げ)への加工も盛んに行われています。これに醤油をふりかけ、すだちやかぼすを絞ると酒の肴としては最高峰です。
ワカサギの身が美味しいのはこれから真冬にかけてですが、春になると子持ちが楽しめます。料理法や好みに合わせてシーズンを選ぶのがおすすめです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>