「外来魚」と聞いて思い浮かぶサカナと言えばブラックバス・ブルーギルなどの「淡水魚」ばかり。海には外来魚はいるのか気になり調べてみました。
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外来魚と言えば淡水魚
「外来魚」という言葉を聞いて想像するサカナと言えば、ブラックバスやブルーギル、はたまたニュースで話題となるアリゲーターガーなどでしょうか。
外来魚とは、本当なら日本にはいなかったはずのサカナが、人間の手によって日本に持ち込まれ、自然界で野生化し、さらには繁殖して新たな生態系を作ってしまった生き物のことを指します。
「生き物が増えるのはいいことでは?」と思う人もいるかもしれませんが、外来魚だけではなく、外来生物の多くは日本に古来からいる生き物(在来種)の存在を脅かします。そして最悪の場合、絶滅させてしまうこともある非常に危険な存在なのです。
しかし、よくよく外来魚について考えてみると、名前が挙がるサカナのほとんどは「淡水魚」ばかりなのにお気づきでしたか?
海には外来魚はいるの?
そこで気になるのが、「そもそも海に外来魚がいるのか」ということ。実は、これは非常に判断が難しい問題なのです。海は世界中に繋がっているため、「内・外」の概念がありません。
例えば、秋の美味しいサンマは1年を通して北米や南米まで回遊しますし、ウナギは赤道付近でふ化し、日本の河川を遡上、その後また赤道付近まで南下します。海水に住むサカナは、「海外からやってきたのか、もともと日本の海にいたのか」が判断できないため、外来魚とは言いづらい存在なのです。
一方で、淡水魚については、海では生きられないサカナに関しては、人間が持ち込むことでしか、やって来ることはありません。そのため、このサカナは「もともと日本にいた」、「あのサカナは日本にはいなかった」と判断することができるのです。
海外のサカナが定着してしまった例
しかし、海のサカナは判断がしづらいとは言え、明らかに海外にいるはずのサカナが日本の海に定着してしまっている場合もあります。
例えば、中国原産の「タイリクスズキ」と呼ばれているスズキの仲間や、韓国原産のメバルなどです。見た目は非常に日本原産のサカナと似ていますが、模様が若干違ったりすることで判断が可能です。
彼らは養殖用に中国や韓国から輸入されたはずが、誤って養殖いけすから脱走してしまった、などの原因から日本近海に定着してしまった一例です。
他にも、相模湾でクマノミの仲間が発見されたことや、インド洋原産のサカナが沖縄で発見されたりする事例なども過去には存在します。このような事例に関しては、観賞魚の放流や海水温などの条件があってしまうことで、日本の海に定着してしまったと考えられています。
船に紛れてくる場合も
他にも海外にいるはずのサカナが、人間が意図しないうちに日本にやって来ることがあります。
バラスト水に混入
それが船の「バラスト水」に紛れてやってくる事例です。
バラスト水とは、積み荷の重量と合わせて船水を安定させるために、船底のタンクなどに注入する海水のことです。大きな荷物を積み込むことを前提とした船は、船の重心を支えるために、荷物を積み込む前は、船底に多量の海水をタンクに貯めています。
例えば、車を海外から輸入する時などが良い例でしょう。荷物の積み下ろしの際に、海水が流入されたり、排出されたりします。バラスト水にその土地にしか住んでいないはずのサカナや、遊泳能力の低い稚魚、ふ化前の卵や付着性の貝類なども紛れ込んでしまう可能性があります。
条約で対策されている
バラスト水への対策については、国際的にはバラスト水管理条約が2004年2月に採択されていますが、こういった現象が毎日いたるところで起きていることを考えると、今後はさらに海外固有種が日本で発見される事例が増えていくことでしょう。