無毒で肝まで安全に食べられることが魅力のカワハギ。しかしカワハギの仲間にも毒を持つものがおり、また最近では間違って売られてしまう事件も頻発しています。
(アイキャッチ画像提供:野食ハンマープライス)
毒を持つ「ソウシハギ」とは?
猛毒魚の多いフグ目に属する魚でありながら、全身が無毒で美味しく食べることができるカワハギ。とろっとした肝を生かした「肝あえ」などはまさにカワハギを食べることの幸せを味あわせてくれます。
しかしそんなカワハギの仲間にも、残念ながら毒を持つものがいくつかいます。その中でも近年非常に有名になっているのが「ソウシハギ」。
ときに70cm近い大きさにまで成長する大型のカワハギで温かい海に多く棲息しています。唐草模様のような複雑な体色が特徴的です。
どんな毒を持っているの?
主に底生生物を食べるこのソウシハギは、餌に由来する「パリトキシン」という毒素を内臓や消化器官に蓄積することがあります。このパリトキシンはほかにもハコフグやアオブダイなどから検出されており、とくにアオブダイでは食中毒による死亡事故も発生しています。(『自然毒のリスクプロファイル:魚類:パリトキシン様毒』厚生労働省HP)ソウシハギによる人の中毒事故は起こっていませんが、家畜の事故は発生しており、同様に注意が必要です。
ただ、消化器官以外には毒がないとされており、とくに筋肉は通常のカワハギ同様美味のため、沖縄などでは市販されることもあるようです。
近年警戒されるソウシハギ
このソウシハギ、実は近年、日本各地で度々ニュースとなっています。なぜなら海の温暖化により生息域が北上し、これまで漁獲されたことがない場所でも見つかるようになっているからです。
2017年には、東京湾奥・横浜にある海釣り公園で釣り上げられ、注意勧告がなされるという出来事もありました。(『「ソウシハギ」猛毒です』横浜フィッシングピアーズ 2018.9.2)ほかにも兵庫県や山口県などの瀬戸内海、石川沖の日本海で確認された例もあります。
これらの目撃情報は、海水温が最も高くなると言われる9~10月頃に多くなっており、これからのシーズンは注意が必要です。
過去にニュースになったことも
ソウシハギはその毒や見た目から、普段食べられていない本州で流通することはまずありません。しかし、2018年に三重県のスーパーで誤って販売され、騒ぎになりました。(『間違えて有毒魚?を販売 三重のスーパー、2人が購入』朝日新聞 2018.12.13)なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか。
カワハギの仲間はその強靭な皮膚を剥いて調理をするため、調理しやすいようあらかじめ皮を剥いた状態で販売される事がよくあります。基本的には身と肝を食べる魚なので、それだけになって売られることもあります。
ソウシハギの特徴的な模様も、皮をはぐことで失われてしまい、他のカワハギと区別がつかなくなってしまいます。近縁種でソウシハギ同様に大きくなる「ウスバハギ」という種類もあり、これと間違って売られてしまうこともあるようです。