令和元年の漁業・養殖業生産量は過去最低 それでも「成長産業」のワケ

令和元年の漁業・養殖業生産量は過去最低 それでも「成長産業」のワケ

暗いニュースが目立つ日本の漁業。令和元年の漁業・養殖業生産量は過去最低を記録してしまいました。それでも実は成長産業とも言えるポジティブな側面があるんです。

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令和元年の漁業生産量は過去最低

去る5月28日、農林水産省は令和元年度の「漁業・養殖業の生産統計」を発表しました。それによると令和元年の漁業・養殖業の生産量は前年比5.8%減の416万2800tであり、統計上比較可能な昭和31年以降での最低を2年ぶりに更新したそうです。

このうち、海面漁業の漁獲量は319万7000tで前年4.8%減となっています。スケトウダラなど増加したものもあるが、漁獲量が比較的多いサバ類やサンマなどが減少した結果この数値となっています。

令和元年の漁業・養殖業生産量は過去最低 それでも「成長産業」のワケ青魚類の漁獲量は大きく減少した(提供:PhoteAC)

内水面漁業・養殖業の生産量も、さけ・ます類の漁獲高減少により前年6.1%減と、漁獲量ベースで言えば全面的に減少していると言わざるを得ない状態です。(『令和元年漁業・養殖業生産統計』農林水産省)

縮小が続く日本の漁業

日本の漁業における漁獲量は、昭和59年の1282万tをピークに減少を続けています。特に平成2年~7年にかけて極端な減少が起こっているのですが、これは沖合漁業のうち「まき網漁業」によるマイワシの漁獲量が大きく減少したことによるものです。(『平成30年度水産白書』水産庁)

マイワシに限らず、サバやサンマなどかつて大量に獲られていた魚たちの漁獲量が相次いで減っています。これは、海洋環境の変動の影響を受けて資源量が減少したことが主な要因と考えられます。

令和元年の漁業・養殖業生産量は過去最低 それでも「成長産業」のワケ設備の老朽化も日本漁業における大きな難問のひとつ(提供:PhoteAC)

これに加え、全国的に漁業者の減少・高齢化が進んでおり、あわせて漁船の高船齢化等も起こっているために、生産体制のぜい弱化が起こっています。また、日本では現在、世界的にも珍しい「魚離れ」が進行しており、魚介類の消費量自体著しく減少しています。

これらの要因が合わされば、漁業生産量は減少の一途をたどるのも、やむを得ないことだと思われます。

実は成長産業のワケ

そんな日本の漁業ですが、実はポジティブな見方も可能となっています。というのも、漁業生産量がこのように減少し続けている一方、平成25年以降は「漁業生産額」は上昇しているのです。

平成29年の漁業・養殖業の生産額は、前年1%増となる1兆6,075億円でした。このうち海面漁業の生産額自体はほぼ横ばいとなっているのですが、海面養殖業の生産額は5250億円で前年3%増となっています。ノリ類や種苗の生産額が増加したためと考えられており、消費者ニーズの高い養殖魚種の生産が進展したことが生産額の向上につながったと見られています。内水面漁業・養殖業の生産額も、前年5%増となる1,197億円で、はっきりと増加傾向にあることが伺えます。(『平成30年度水産白書』水産庁)

令和元年の漁業・養殖業生産量は過去最低 それでも「成長産業」のワケ高需要の魚の養殖が漁業生産額の向上につながる(提供:PhoteAC)

日本の漁業は長らく斜陽産業と言われ続けていますが、実際はまだまだポテンシャルを秘めています。コロナによる魚価低下など新たな難題もありますが、それでも世界的な魚介類需要増もあり、工夫次第で成長産業に転換させられるものだと言えるでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>