日本で「靴底」と呼ばれる『シタビラメ』 海外での呼び名は「ソール」?

日本で「靴底」と呼ばれる『シタビラメ』 海外での呼び名は「ソール」?

「見た目は悪いけど味は一級」という魚は少なからずいますが、今回は「見た目が地味の極みだけど実は高級魚」の『シタビラメ』を紹介します。

(アイキャッチ画像提供:野食ハンマープライス)

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カレイ目の変わり者・シタビラメ

シタビラメ、という魚がいます。舌のような形をしたヒラメ、という意味ですが、ヒラメの仲間ではありません。

カレイ目に属する他の魚同様、体の片側(海底にいるときの上面側)に目がついていますが、シタビラメにはカレイのように「右より」に目がついているものと、ヒラメのように「左より」についているものがあります。

日本で「靴底」と呼ばれる『シタビラメ』 海外での呼び名は「ソール」?目玉の位置は中間的なオオシタビラメ(提供:野食ハンマープライス)

体型はぺったんこ、体の下面側に裂けたような形状の口があり、生き物に明るくない人なら魚とすら思わないかもしれません。色合いは地味な焦げ茶色から真っ赤なものや派手な縞模様のあるもの、サイズも指先サイズからやたらと長く70cmを超えるものまであるなど、多種多様の形状をしています。

足回りに縁のある魚?

その形状から様々な地方名がついているシタビラメ。いくつかの種では正式和名が「〇〇ウシノシタ」となっているものの、基本的には一緒くたにシタビラメと呼ばれるか、もしくはほかの地方名で呼ばれてしまうことが多い魚です。

地方名で有名なものは瀬戸内地方の「ゲタ」、九州の「クツゾコ」があります。シタビラメの「頭寄りが丸く、尾に向かってなめらかに細くなるシルエット」や強く側扁しぺったんこな体型が靴などの履物を連想させるようです。「ゾウリガレイ」と呼ぶ地域もあるとか。

日本で「靴底」と呼ばれる『シタビラメ』 海外での呼び名は「ソール」?靴の中敷きそっくり(提供:PhoteAC)

面白いのは、フランスやアメリカなど欧米での名称「sole(ソール)」は「靴の中敷き」を意味し、外国でも足に関連した名前がつけられているのです。それだけこの魚の見た目が与えるインパクトというのは強いようです。

靴底なのに「高級魚」

このように、名前も見た目も華やかさとは無縁のシタビラメですが、近年急激に価格が上昇している魚の一つでもあります。

そもそもフランスにおける「sole」は、ムニエルの材料としては超一級のもの。水分を多く含み、ジューシーでホロリと繊維質な身はバターとの相性が抜群なのです。そのため古くから名の知れた高級魚であり、高値で取り扱われてきました。

日本では長らく、どちらかと言うと地域的な食材で、いわゆる惣菜魚の一つでした。塩焼きや煮付けなど加熱すると美味で人気がある一方、身が薄いことや鮮度落ちが速いことから刺身にされることはなく、そのため高級魚扱いされることがなかったのです。

日本で「靴底」と呼ばれる『シタビラメ』 海外での呼び名は「ソール」?「くつぞこ」の煮付け(提供:PhoteAC)

しかし日本でもフレンチレストランが増え、ムニエルやスープドポワソンといった本格的フランス料理の材料として国産のシタビラメが注目されるようになると、需要がじわじわと増え、価格も上昇していきました。現在では都心のスーパーでも普通に見かけるようになり、価格もそれなりのものとなっています。(『アカシタビラメ』ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑)

このシタビラメ、年間通して入荷がありますが、最も身の味が美味しい旬は今の時期。上記の料理のほか、身の薄さを生かした唐揚げや、骨ごとミンチにしたつみれ汁にすると味の良さを楽しめます。またオオシタビラメやコウライアカシタビラメなど大きくなる種は生食も美味。頑張って5枚おろしにして集めの平造りにすると、もちもちっとした身の弾力が楽しめるでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>