カンダイの和名はコブダイ。70cmを超えるサイズともなれば、竿をのし、ハリスをブチ切り、釣りバリをもかみ砕く怪物ぶりを発揮する。今回は、筆者の経験から同魚の美味しい食べ方をアドバイスしたい。
(アイキャッチ画像提供:伴野慶幸)
目次
カンダイって食べられるの?
ものすごいパワーで釣り人を翻弄する海のモンスター、カンダイ(コブダイ)。昔は磯の底物釣りで、イシダイやイシガキダイ釣りのゲストとして、わずかに釣れる存在だったが、今は防波堤や護岸からでも狙う釣り人が増え、YouTubeでもおなじみの魚となった感がある。
釣り物としては面白いが、持ち帰ると「気持ち悪い」、「こんな大きい魚どうするつもり?」と、食用魚としては招かれざる存在だ。カンダイって食べられるの?と疑問に思っている人も多いはず。今回は、釣り人の特権、知っている人だけが得をする、食用魚としてのカンダイについて紹介してみよう。
カンダイはタイではなくベラ
漢字で書くと「寒鯛」、「瘤鯛」。しかし実際はタイとは縁遠いベラ科の魚である。したがって、その味を想像するなら、タイではなくベラの味を元に、カンダイの味を想像してみると良いだろう。
キュウセンベラを食べて美味しいと感じた事のある人なら、カンダイもぜひ食べてみてほしい。では、ベラを食べた事のない人は・・・?食べたことがない人もだまされたと思って食べてみてはいかがだろうか。
食べないなら即リリースを
まず、カンダイを釣りをする前に、食べるか食べないかを先に決めてほしい。カンダイは個体数が少ない上に、普段は海底で大人しくしている魚だ。釣り人との格闘の中で、魚体に想像以上のストレスがすでにかかっている。さらにストリンガーやロープに結んで泳がしておくと、ますます弱らせてしまう。
食べないと決めたら、即キャッチアンドリリースをしてほしい。少しでも元気な状態で、生きて海に返してあげてほしい。
釣り場での下処理が必須
では、食べると決めたらどうすればよいか。カンダイの味は、釣り場での下処理が大きな決め手になると言っても過言ではない。先にも述べたがカンダイはベラ科の魚だ。ベラは自然死させると、身体じゅうが粘液まみれになり、臭みが出てくる。
自然死させたカンダイの魚体は粘液まみれになり、臭みもまわり、とうてい食欲のわく代物ではなくなってしまう。直前までロープに結わえて生かして、納竿直前に活け締めにして、エラを取り、内臓も白い腹膜も全て抜いて、腹の中をできるだけきれいに掃除した状態にしてほしい。
エラと内臓は確実に除去
大きな硬いウロコに覆われ、ゴツゴツした魚体のカンダイは、他の魚のようにきれいな血抜きは難しいので、エラを完全に取り去るだけでも良しとしよう。空にしたエラ蓋と腹の中は、海水でよく洗い、タオル一本を汚して捨て去るぐらいの気持ちで、汚れやヌメリをきれいに拭きとろう。
そして、自宅に持ち帰るまでの間は、魚体を氷で冷やしておくのを忘れずに。腹の中にも氷を当てておきたい。面倒で手間がかかっても、釣り場で丁寧に下処理したカンダイなら、料理の仕上がりは無論、自宅に持ち帰って捌いている途中でも、食用魚としての実感を大いに得られるだろう。
捌くのに必要な道具
自宅に持ち帰ったら、いよいよ捌いて三枚下ろしにするのだが、ここでも難関が待ち構えてる。それは大きな魚体と硬いウロコだ。
【用意するもの】
・新聞紙
・軍手
・たわし
・ウロコ取りの道具
・出刃包丁
上記の道具は、あらかじめ準備しておこう。まずは台所のシンクで、たわしを使って表面と腹の掃除を行う。次にウロコ取り。ウロコがかなり飛び散るので、作業前にはまな板の上だけでなく、周りにも広めに新聞紙を敷いておくと後で片付けが楽だろう。
ウロコ取りの注意点だが、包丁の刃や背を使っての作業は、カンダイ相手では難しいので、専用の道具を使って残さずに掻き取ろう。
頭部の切り離しが難所
次に最大の難所、あの巨大な頭を取り外す作業が待ち構える。ケガを避けるべく、両手に軍手をはめてから、出刃包丁を握り、エラ蓋の横に包丁を差し入れる。しかし、刃先は硬い骨と真っ向勝負すると欠けてしまうので注意が必要だ。
刃先を入れるのは、骨と骨の間の節の部分にある軟骨。ここでも他魚に比べると硬いが、包丁に過度の負担をかけずに頭を切り落とすための切れ目はそこしかない。
出刃包丁だけで断ち切るのが難しければ、節の軟骨部分にある程度まで刃先が入った時点で、頭を抱えて首折りしてみるのも一策だ。頭を取り外せさえすれば、あとは普通の三枚下ろし。料理の峠は越えたも同然だ。
アラも有効に活用
カンダイは巨大魚だけに、三枚下ろしにする過程で、アラも大量に出るし、アラに身も残ってしまう。アラは捨てずに酒を振って臭みをとってから、汁物のダシ取りに使ってほしい。良いダシがとれる。
魚のクセが気になる人は、ネギや少量の生姜を入れると良い。アラに付いた身はすきとって、軽く塩を振って白焼きに、あるいは細かく叩いてつみれダンゴにすると、汁物の具になるので有効活用しよう。
水気取りが味の分かれ目
奮闘の甲斐あって、身は大量に取れる。ここでもうひと手間を絶やさずにしたい。当日の料理用も保存用も、身はキッチンペーパーで丁寧に、しっかりと水気を取ることが重要だ。
余分な水分は、のちに臭みの原因になるので、味の分かれ目だと言っても過言ではない。保存用は、いったん水気を取ったらキッチンペーパーを取り替え、くるんでから冷凍保存すると良い。
フライ、ムニエル、煮付けがお勧め
釣り場と台所でそれぞれしっかりと下処理した身は、臭みもない良質の白身で、格好の食材となる。筆者の実食経験からは、美味しい料理法として、フライ、ムニエル(バター焼き)、濃いめの味付けでの煮付けをお勧めしたい。
いずれも他魚の白身魚の料理法と同じように考えてよいが、あえてアドバイスするなら、厚い皮は熱すると硬くなるので、皮に適度に切れ目を入れてから料理しよう。
ここでは一例として、フライの手順を紹介する。
カンダイフライの調理法
【材料】
・カンダイの切り身 2~3切れ
・塩 少々
・小麦粉(薄力粉) 大さじ2~4
・パン粉 適量
・卵 1個
薄めに塩を振って数分置き、小麦粉(薄力粉)を薄く付けてから溶き卵に通し、パン粉をまぶす。揚げ始めは170度くらいの温度で、3分ぐらいで裏返したら温度を180度に上げて、身が浮いてきて色がきつね色になったら揚げ上がり。
タルタルソース、ウスターソース、レモン汁と何でも合う。カンダイの身は繊維が太く肉質がしっかりしているので、煮付けにする際は味が染みやすいように、身にも切れ目を入れて、落とし蓋を使って、濃いめの味付けで煮ると良い。
生食の評判は賛否両論あり
その他の料理法として、塩焼き、寄せ鍋の具、ブイヤベースなどもお試しあれ。カンダイのしっかりした肉質を生かして、ごく軽く塩を振って白焼きにした身を、ホワイトソースと合わせれば、グラタンやドリアの具にも使える。
カンダイの身は、タイやタチウオなどに比べれば味にクセはあるが、タラほどのクセはない。
「カンダイって食べられるの?」その答えは「しっかりと下処理さえしておけば、美味しく食べられます」。ただし、最後に1点だけアドバイス。
刺し身、海鮮丼、カルパッチョなどの生食は、評判に賛否両論あり。インターネットを見ても、生食の評判は様々なので、まずは少量だけ試してみてからにしてはどうだろう。
<伴野慶幸/TSURINEWS・WEBライター>