伊藤さとしのプライムフィッシング。テーマは「秋のチョウチン釣り」。野釣り場を主体にこの釣りの魅力や攻略法などを伊藤とともに考えてみたい。今回はなぜ先人は"秋はタナを釣れ"と残したのか。その意味をひも解いてみたい。
(アイキャッチ画像提供:週刊へらニュース 伊藤さとし)
「秋はタナを釣れ」の真意
前号でも少し触れましたが 「秋はタナを釣れ」 とよく言われます。正直、意味がよく分からないのですが…。だってどの季節にせよ釣れるタナを探ることに変わりはないのでは?
「ではこれならどう?”秋のタナは移ろいやすい”」
それなら意味は理解できます。つまり秋は水温が日増しに下がり、魚のタナも変わりやすいってことですよね。
「ヘラブナに限ったことではないけど、魚は常に適水温を求めている。そして水深の差によって水温は変わる。だからこそ、ヘラのタナも変わるってこと。つまりタナの相違はおもに水温の差ってことだよね。さらに言うなら、水温の差が魚の活性も決める。真冬にヘラが低活性になるのはこの原理だろうからね。つまり水温の差とは、ヘラの泳層と活性の有無という二面性を併せ持っているってことになる」
ターンオーバーなど濁りでもタナは変化する
先ほど 「おもに」 と言われました。と言うことはほかにも要因があるのですか?
「濁りかな。大雨、暴風、ターンオーバーなどさまざまな要因で濁りが発生すれば、それを嫌ったり好んだりして泳層や活性が変化する」
クリアレイクなどで濁りが出ると、大型が釣れやすくなるのと同じ原理ですか?
「近いものはあるけど逆に活性を下げたり、その層から魚が離れてしまうこともあるよね。つまり濁りの度合いかな。一例だけどひどく濁ってしまうと、クリアな水を求めてそこに魚が移動してしまうことがあるよね。多くの場合、濁りは上層や上流から澄み始めるから、秋なのに浅ダナで釣れることがあるのはそういうことだよね」
ターンオーバーとは
先ほど聞きなれないワードが出てきました。ターンオーバーって何ですか?
「ある程度水深がある釣り場、つまりダム湖とか自然湖などでおもに秋~晩秋に起こる現象で、早い話が湖底付近の水と表層の水がひっくり返ってしまうことだよ。湖底はヘドロとかが溜まっていることが多いから、それが表層へと動く過程で濁りを発生させる」
なぜ表層と下層が入れ替わるのですか?
「お風呂をイメージしてみて。沸かした湯を張ってしばらく放置すると、表層は熱くて下がぬるく感じたことがあるでしょ。あれは冷たい水ほど重く熱いほど軽いという理屈から発生している。つまりは水温の差イコール比重の差でもあるがゆえに起こる現象なんだ」
秋はタナの条件が複雑になる
それと同じような現象が湖なんかでも起こるということですね?
「そういうこと。夏場とかに底のヘドロが日中に浮いてくることがあるのを見たことがない?」
あります。あの臭いヤツですよね。
「あれは底付近の水温が上昇して比重が軽くなったがゆえに浮いてきた現象なんだ。つまりターンオーバーと似たようなものなんだよ」
でも濁りイコール釣れないとは言ってませんよね?
「肝心なのはそこなんだよ。秋は雨も降るし気温も低下する。つまり魚の泳層や活性に関するパズルの組み合わせが複雑になるから、魚がどこにいるのかが分かりにくくなる。それを探し当てなければ、いい釣りはできない。だから”秋はタナを釣れ”なんていう格言が生まれたんだろうね」
次回も 「秋のチョウチン釣り」 です。
<週刊へらニュース 伊藤さとし/TSURINEWS編>
早霧荘