「秋サバは嫁に食わすな」と言うように、サバはこれから全国的に旬を迎える魚である。今回は、おいしいサバの見分け方を、奈良県中央卸売市場の丸中水産株式会社勤務の著者が紹介します。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・有吉紀朗)
サバの種類
秋サバは嫁に食わすな。いやどうぞ食べてください。と言うように、これから旬を迎えるのがマサバ。サバにはマサバとゴマサバ、あとよく売られているのが大西洋サバ(ノルウェーサバ)があるが、これは鮮魚より加工品や塩サバが多い。
ゴマサバは年中味がかわらないと言うのが教科書的な話だが、釣り人的には淡路沖でイカナゴを食べたゴマサバは思わずエッと言うくらい美味しい。また、ノルウェーサバは水温の低い海域なだけに脂の乗りはいい。
マサバとゴマサバの見分け方
釣り人なら分かって当然。すぐ見分けが付くという人も多いが、スーパーの鮮魚売り場でも時折間違っているから、よく見るのが大事。
お腹部分にゴマ模様があるのがゴマサバと言うのが一般的なのだが、この模様が薄いゴマサバがいたり、体側に暗色楕円斑点があるマサバがいたりするからややこしい。私の場合、納品してややこしいサバは、背ビレの棘条を数える。9本ならマサバ、11本ではゴマサバと分ける。和歌山・湯浅の乗合船の船長はハイブリッドもいると言うのでややこしいが。
店頭でのサバの見方
1尾売りされているサバは、基本的にはマサバもゴマサバも見る場所は同じ。
ドリップの少ないものを
魚体の弾力、エラの真紅色、目の濁り具合で判断する。よくないのはお腹がへこんでいたり、ドリップがでていたり、全体にサバの色がくすんでいたりする。
切り身は切り口を確認!
スーパーではだいたい切り身にされていたり2枚、3枚におろされてパックで売られていることが多い。この場合、切り口の色を見る。悪い物はドドメ色になっている。またうまく皮だけを見せて切り口が見えない時は皮にシワがない事や光沢を見る。
角度を変えて確認する事が大事
しかし、スーパーや鮮魚店もうまく光りを当てて、魚をいかにきれいに見せるかなど、売れるように工夫しているので角度をかえて魚を見るのも重要。釣り人が魚を大きく見せるように、フィッシュグリップで大きく前に突き出しているのと同じような努力である。
海から離れた地域でも親しまれるサバ
サバ話で有名なのは福井・小浜から京都まで、塩をしたサバを運んだサバ街道。福井に釣行する際、琵琶湖の西を通る国道303号や367号などを歩いて運んだ苦労は、京都のサバ棒寿司、奈良の柿の葉寿司など、海から遠く離れた場所で伝統、文化を育んでいる。
また大仏のある東大寺では聖武天皇の時代に80尾のサバをお供えして、それが80巻の華厳経の巻物に化けていた話など、海から遠く離れた場所でも昔から親しまれていたようだ。
ブランドサバとは
大衆物とか青物と呼ばれるサバの多くは、一度に大量に漁獲される事が多いので、塩水氷の中に浸かって入荷して扱いが悪いものもある。その中でも状態がいいのが旬サバ(トキサバ)とか金華サバといったブランドサバ。そして関サバ、岬サバ、松輪サバなど、絞めて水や氷に直接当たる事も無く入荷する魚。
塩水氷で大量に入荷する魚とは別格である。価格も10倍くらいする事がある。また屋久島の首折サバ、清水サバと言ったゴマサバのブランドもある。最近は養殖のサバも各地から入荷するが、こちらはアニサキスの心配がない。
加太のサバが絶品
中でも一番美味しいのは、これから和歌山・加太のビニール片(疑似餌)で釣れるサバだと思っているのは、関西の船釣りファンの中でも私1人ではないはず。
釣行帰りに食べる和歌山ラーメンのお店にあるサバの早寿司も美味しく感じる。
和風、洋風といろいろな料理ができるサバだが、刺し身に限ると言う人もいるだろう。自分も釣りたては刺し身で食べる。
輸入も輸出もされるサバ
紀伊水道・ラングイのサバも年々少なくなっているようだが、実は日本はサバを輸出している。輸入もしているのだが輸入しているのが脂の乗ったノルウェーサバ(漁獲制限が厳しく小型魚は捕れない)、輸出しているのが小型で人気薄のサバ(漁獲制限が緩い)で、主にアフリカの途上国に輸出されている。2006年からは輸入より輸出の方が多くなっていると言う報告がされている。
「なにかおかしい」と思うと同時に、磯のグレ釣りでまきエサに群がる小サバも、船釣りでタナまで落ちる前に食ってくるサバも愛おしく思うのである。
<有吉紀朗/TSURINEWS・WEBライター>