今日の問診票
相模湾のコマセキハダです。
何とか念願の1本を獲りたいのですが、どうしてもアタリを出すことができません。ぜひ、先生のアドバイスをよろしくお願いします。
診断結果
キハダマグロは、確かに簡単には釣れる魚ではありません。
通常は約8時間の釣行時間で、アタリはだせても1人1~2回、私もアタリがだせない日があります。
しかし、上手な人はコンスタントにアタリをだして仕留めていることも事実です。
アタリがでたり、でなかったりするには運も必要ですが、理由があるのです。
よく「ハリスは何mが釣れますか?」と聞かれることがあります。
ハリス長はあるときは4.5m、またあるときは8mで釣れることもあり、その時の船の流し方や魚の活性によって臨機応変に変化させなければならず、絶対的なものはないのです。
それはコマセの撒き方やエサの付け方にも通じます。
釣りに限らず結果をコンスタントに出せる人は、物事の理由・原因の分析を正しく行え、できたことを再現し、できなかったことを確実に改善できる人です。
私にとってもキハダのアタリをだすことは簡単なことではありませんが、自らの経験からアドバイスさせもらいます。
アタリを出す基本
まずコマセカゴやキーパーの位置を踏まえ釣り座周りを整頓し、手前マツリを極力防ぐこと。
ビシへのコマセ詰めやハリへのエサのセットは、仕掛けを上げたら即座に行い次の投入に備えることです。
私の場合、エサのオキアミはカツオでもキハダでも1匹丸掛けですが、そうでなければいけないわけではなく、投入時や海中でズレたり外れ難いことが第一前提です。
丸掛けは抱き合わせや房掛けに較べ、オキアミの体幹に沿って入るハリ軸の長さが一番長くなり、オキアミの固定が確実なのです。
ただし、付けエサが小さい場合はアピール度が劣るので、抱き合わせも有効です。
とにかくどれだけ一生懸命やっていても、キハダが船下にいるときにオキアミがハリに付いていなければアタリはでません。
なおオキアミは、眼が取れていない大型を使うことが有利です。
基本的にキハダはコマセのオキアミに寄ってきているので、色や添加物で刺しエサを目立たせるのは、コマセ釣りでは逆効果になると私は考え、今までも一切着色や添加物は使用せず、キハダを釣ってきました。
ただオキアミは解凍具合や乾燥度合いで、大きさや質感が非常に変化します。
凍りすぎていても解けすぎていてもオキアミは小さくなります。
ベストな解凍状態のとき、容積も一番大きくなり、ハリにもしっかり固定できるようになります。
8時間の釣行でペース配分を考え、勝負時に大きな状態でオキアミが使えるよう、保管には十分過ぎるほど気を遣いましょう。
ふたつの狙い方
マグロ釣りには、その時の船長の流し方で2種類の狙い方があります。
それはチェイスとウエイトです。
チェイスは、猛烈なスピードで移動する群れを先回りして、船下を通過するタイミングで船長の合図で仕掛けを降ろすやり方。
流しの時間は短く、一流し一投入が多いです。
ウエイトは、移動が遅くオキアミに反応する群れをコマセで船下に寄せて釣るやり方。
一流しの時間が長く、仕掛けの入れ替えもできます。
偶然ではなく狙ってアタリをだすには、現場で今どちらなのかを把握すること、それを踏まえてハリスの長さや仕掛け投入後のコマセの振り出し、タナ取りを区別して行う必要があるのです。
チェイスパターン
チェイスの場合、船長の合図に遅れることなく仕掛けを投入することが、アタリをだす必要条件。
一目散に船下を通過する魚を狙うので、一秒でも早くハリスが張って刺しエサが海中で自然に漂うことが大切。
ですから潮なじみに時間がかかる6m以上の長ハリスは不利になります。
ただし、短すぎるとコマセを振ったときや船が揺れた時のビシの重量がダイレクトに刺しエサに伝わり、動きが不自然になるので4.5~6mが妥当。
同乗者のハリス3mのカツオ仕掛けでもヒットするときは、短いハリスで勝負できます。
なお短いハリスの場合は、それだけクッション性を損ないます。
そのため24号など太いほうがいいでしょう。
コマセは仕掛けが下りた途端にパッと出るほうがいいので、タナよりハリス長~半分長下でビシを止め、その反動でコマセが即座に放出されるようビシの窓を気持ち広めに調整。
そして素早くタナまでビシを巻き上げ、手持ちでアタリを待ちます。
ウエイトパターン
ウエイトの場合、これはマダイ釣りに似ています。
自分、そして同乗者のコマセがどのように流れ、それとキハダがどこに位置しているかイメージしなければなりません。
キハダは青物でありながらマダイと同じように良型は警戒心が強く、ビシを嫌います。
ですからハリスが長いほうがアタリはでやすくなる傾向がありますが、食いが立てばそれほど違いはでません。
私は6~8mでやっています。
ただしハリスが長いとアタリがでてもアワセが効きにくくなり、ハリが外れたり、飲まれてハリスが切られるリスクが高まります。
同乗者が6mでアタリをだしていたら、6mでも大丈夫です。
タナよりハリス長の半分ほどビシを下に降ろしてハリスが潮になじむのを数秒待ち、コマセを出しながらタナまでビシを上げてアタリを待ちます。
ビシ窓はチェイスの時より絞り気味にして、一投入6~7分の間にタナ取りとコマセワークを2、3回繰り返します。
ビシ回収時、コマセが4分の1ほど残ってくるのがベストです。
群れが寄ってきたら竿は必ず手持ちにし、激しくシャクってはいけません。
船の揺れを緩衝すべく、ビシを揺らさないよう手持ちで竿先に集中。
このタイミングでアタリがでることが多いです。
勝負時の見極め
キハダにせよカツオにせよ時合いというものがあります。
それを見極め臨機応変に対応できる釣り人がキハダも釣ってカツオの土産も確保しています。
がむしゃらにキハダ1本に絞って8時間がんばるよりも、同乗者や他船の動向をしっかり観察、把握する視野の広さ、余裕が、体力や集中力も温存し、ここという勝負時に妥協のない釣りができるからなのだと思います。
実際、私もそうなのです。
釣りは自然には逆らえません。
釣れるときに釣れるものをしっかり釣る。
一日の間にキハダの時合いは数回訪れます。
それを見きわめ、その時に集中力を高め、最適な仕掛け、最高の刺しエサで最高のコマセワークをするのです。
キハダハンターの極意
心技体を尽くし己を信じ切ったとき、念願の1本は運や偶然ではなく、必然的に仕留められます。10月いっぱいまでキハダは狙えます。がんばりましょう!
侍ドクター・鮪狩師
<近藤惣一郎/TSURINEWS編>