日本人が愛してやまない『マグロ』。マグロのような大型の赤身魚は回遊魚と呼ばれ、死ぬまで泳ぎ続けます。彼らはなぜ泳ぎ続けるのでしょうか。調べてみました。
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死ぬまで泳ぎ続ける
マグロは生まれたその日から死ぬまで泳ぎ続けます。
その理由はいくつかあります。調べてみました。
呼吸のため
魚も人間と同様に酸素を吸収して、二酸化炭素を排出する生き物です。人間の場合は肺で呼吸を行い、魚は鰓(エラ)で呼吸を行います。
魚の多くは鰓をパタパタと動かすことにより、口から鰓に水を通して酸素を吸収します。
しかし、マグロにはこの鰓を動かす筋肉がありません。ではいったいどのようにして酸素を取り込んでいるのでしょうか。
マグロの場合、鰓を動かすのではなく、口を開けて泳ぐことで自然と鰓に水流が当たり、新鮮な酸素を取り込んでいます。
この呼吸法はラム換水法と言い、多くの回遊魚がこの呼吸法を使っています。ですので、泳ぎを止めてしまうと酸素を取り込めなくなり、最悪の場合は窒息死してしまうのです。
沈まないため
マグロの身は非常に密度が高く、周囲の海水と比べて比重が大きいため、泳ぎ続けないとドンドン沈んでいってしまいます。
マグロの体の構造は、飛行機の翼の構造に似ており、胸ビレと尾ビレの付け根にある隆起縁と、体そのものの形状によって下から上に押し上げる力を生じさせているのです。
いつ眠るの?
前述のとおり、マグロは泳ぎ続けることで生きていると言えます。
では彼らはいつ眠るのでしょうか。
多くの魚は、夜になると岩陰や海藻の中に身を潜めて眠り、太陽の光が差しこむ頃に目覚めて活動を始めます。
しかし、マグロは夜間になっても泳ぎを止めることはありません。日中に比べて速度を落とし、代謝を落とすことによってずっと泳ぎ続けることを可能にしています。
泳ぎ続けるために進化
マグロなどの回遊魚の身は、食べたことがある方はご存知の通り、赤い身をしています。
これは血液に含まれる色素タンパク質「ヘモグロビン」や、筋肉色素タンパク質の「ミオグロビン」が多いことを意味しています。
赤身の魚は、筋肉を動かすための大量の酸素が必要になり、その運搬に役立っているのが、ヘモグロビンとミオグロビンなのです。
白身の魚は、岩陰や砂場などに棲み付いている魚が多く、あまり長時間動きません。
赤身の魚に比べて、酸素を必要としないため、血中のヘモグロビンやミオグロビンが少なくなり、その結果、身が白く見えるのです。
簡単に言うと、体をよく動かしている魚は赤身、動かしていない魚は白身、と言えます。
同種の魚は?
マグロの他にも泳ぎ続けなければならない魚は存在します。マグロと同じような赤身の魚がその代表と言えるでしょう。
カジキ・カツオ・ブリ・イワシ・サバなどの回遊魚は同じように泳ぎ続けますし、一部のサメ類も休むことはありません。
彼らが泳ぎ続けてくれるからこそ、私たちは美味しい赤身のお刺身を食べられるのです。
今日も彼らは休むことなく、どこかで泳ぎ続けていることでしょう。
<近藤/TSURINEWS・サカナ研究所>