水族館や動物園で人気のイルカやシャチ。実は自然界では我々ヒトの暮らしに被害をもたらす存在でもあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
イルカのせいでタチウオ不漁?
熊本県の隠れた名産水産物・タチウオ。餌となる小魚やイカの豊富な八代海で育つタチウオは大きくて脂が乗っており、同海に面した芦北町には「田浦銀太刀」というブランドタチウオもいるほどです。
しかしそんな芦北町では今年、タチウオの不漁に苦しんでいます。芦北漁協では一昨年、72t弱のタチウオが水揚げされましたが、今年はたった7kgのみで現在はほとんど漁が行えていないといいます。
イルカの群れ(提供:PhotoAC)この不漁の理由のひとつに挙げられているのがイルカ。現在同町の沖合にイルカの群れが入り込んでおり、これがタチウオの餌あるいはタチウオそのものを盛んに食べているとみられています。
可愛らしく人にもよく慣れることで愛されているイルカですが、沿岸部にもよく来遊し魚介類を暴食するため、漁業においては敵となってしまうことがよくあります。
カレイ網を食い破るシャチ
同じような被害は、北海道の海でも発生しています。被害をもたらしているのはこちらも水族館でお馴染みのシャチ。
北海道中南部、日高地方や十勝地方の沖合ではカレイ漁が盛んで、通年刺し網を入れています。しかしこの刺し網にかかったカレイを、シャチが横取りしてしまうのです。
北海道のシャチ(提供:PhotoAC)昨年は頻発するシャチ被害の対策を検討するため、一時的な休漁も実施されました。シャチに襲われた網はボロボロになって使えなくなってしまうため、その被害額はかなり大きなものとなります。
トドと漁師はもはや戦争状態
このような「業務被害をもたらす海の哺乳類」のなかで最も有名なものといえばやはりトドでしょう。北日本沿岸を広く回遊するトドは、様々な漁業に被害をもたらす「海のギャング」として恐れられています。
岩礁帯に群れるトド(提供:PhotoAC)筆者の知人のニシン漁師は「ニシンが接岸すると豊漁となるが、数日網を入れ続けるとすぐにトドの群れが寄ってしまうので漁をストップせざるを得ない」と嘆いていました。彼らはその巨体で刺し網を食いちぎったり、定置網に穴を開けたりしてしまうため、漁業被害は数億〜数十億円に上ります。
そのため、トドは年間の上限数を規定した上で、猟銃による駆除が行われています。駆除されたトドの一部は食肉として加工され、缶詰や冷凍肉の形で購入することも可能です。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

