川でガサガサをすると、さまざまな魚を捕まえることができます。ドンコもその代表的な魚のひとつで、川や湖沼に生息する淡水性の底生魚です。見た目はハゼやカジカに似ていますが、分類上は別の魚で、混同されやすい存在でもあります。そこで今回は、ドンコとハゼ・カジカの見分け方について紹介します。
（アイキャッチ画像提供：額田善之）
ドンコとは
ドンコ（学名：Odontobutis obscura）はドンコ科の魚でずんぐりした愛嬌ある姿をしています。
ドンコ（提供：額田善之）本種は最大で25cm程度にもなる肉食魚で、一生を淡水で過ごします。中国大陸南部、新潟県、愛知県以西、四国、九州に分布していましたが、近年、静岡から南関東へ国内外来種として定着しているようです。
近縁種として、ヨコシマドンコとイシドンコが知られています。
ドンコと同じ生息域で見た目がそっくりな魚
ドンコと同じような場所に生息する魚で姿かたちが似ている魚といえば、カジカ類（カジカやカマキリ）、ヨシノボリ属、ウキゴリ、ヌマチチブなどが挙げられます。
これらの魚たちはドンコとどのようにして見分けることができるのでしょうか。
カマキリなどのカジカ類
カマキリ（学名：Rheopresbe kazika）はカジカ科の魚で、別名「アユカケ」とも呼ばれています。
本種は河口域で産卵し、沿岸で孵化した幼魚が川を遡上して20cm程度まで成長。日本の固有種で、青森県以南の日本海側や茨城県以南の太平洋に流入する河川、四国、宮崎県の河川に分布します。
環境省レッドリスト2020で絶滅危惧Ⅱ類 (VU)に指定され、秋田県などでは絶滅危惧I類に指定されています。
カマキリ（提供：PhotoAC）そんなカマキリは一見するとドンコによく似ていますが、カマキリの体は鱗が無くスベスベしていること、受け口ではないことなどから両者を見分けることができます。
加えて、背びれと臀びれの軟条数に関しては、ドンコと比較してカマキリの方が圧倒的に多いことも特徴です。同様にカジカ属の魚もカマキリ同様に鱗の有無や受け口でないこと、鰭条数などからドンコと区別することができます。
また、カマキリとカジカ属の区別では、鰓ぶたの棘も識別ポイントになります。カマキリでは鰓ぶたの棘が4本あり、そのうちの最も大きな1本が上方に強く曲がっていますが、カジカ属では棘が1または3本で、最上棘は強く上方へと曲がりません。
ハゼ類
カジカ類とドンコの違いは鱗や背びれ・臀びれの鰭条数でしたが、ヨシノボリ属やウキゴリ、ヌマチチブでは腹びれを見ることで容易に区別することができます。
ヌマチチブ（提供：PhotoAC）海と河川に広く生息するハゼ科では多くの種で腹びれが吸盤状になっており、ヨシノボリ属、ウキゴリ、ヌマチチブも例外ではありません。
この特徴からドンコとは明瞭に区別することができます。
ドンコと似た魚を見分けてみよう
ドンコと他の魚の区別は最初難しいと感じるかもしれませんが、じっくり観察すると違いが分かってきます。
ドンコの大きな特徴は、受け口であることです。まずはこの形質を見極めましょう。
次に、鱗の大きさや有無、腹ビレの形状、さらに、体や背びれ、尾びれ、胸びれなどの模様、頭部の斑点の有無などを確認すれば、だんだんと他の魚との見分けができるようになります。
また、細部を観察する際、魚に触ることもあるでしょう。その時は、魚が人の体温で弱らないように網の下から手を添え、小さな観察用の容器に移して観察しましょう。魚に配慮しつつ楽しくガサガサをしてくださいね。
＜額田善之／サカナトライター＞
