アクアリウムで高い人気を誇る観賞用の熱帯魚も、原産地では美味しい食材となっていることがあります。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
人気の観賞魚グラミー
先日、東南アジアの国カンボジアにて魚獲りをする機会がありました。東南アジア最大の河川メコン川と、同じく東南アジア最大の淡水湖トンレサップをもつこの国には、非常に多種多様な淡水魚が棲息しています。
なんの変哲もない田んぼの脇の水たまり、泥で茶色く濁った水の中に網を入れてガサガサやると、グラミーの一種である「スリースポットグラミー」が大量に入りました。
スリースポットグラミー(右列)(提供:茸本朗)スリースポットグラミーは体側に二つの黒点模様が並び、目と合わせて三つの点に見えることからこのような名前で呼ばれています。飼育しやすいことから人気の観賞魚で、アクアリウムショップでもよく見かけます。
派手なフナ?バルブ
カンボジアでは、乾季になればすぐに干上がってしまいそうな水たまりにも色々な魚が棲んでいます。ガソリンスタンドの横にある、ゴミが浮いているような水たまりでも綺麗な魚が釣れました。
一見すると日本にもよくいる小鮒のように見えますが、鰭が鮮やかなオレンジ色で、鰓蓋も赤く色づいています。
レッドフィンバルブ(提供:茸本朗)この魚は「レッドフィンバルブ」という魚で、10cm前後の小魚ですがハッとするほどの綺麗さで、水槽の中でよく目立ちます。こちらも人気の観賞魚のひとつです。
どっちも国民的調味料の材料
これらの魚の他にも「イエローフィンシザーラスボラ」や「アナバス」といった、アクアリウムファンなら誰もがその名を知る美しい魚が釣れました。しかしこれらの魚を見ると、カンボジアの人は「これは美味しい魚だ」というのです。
カンボジアでは摂取されるタンパク質の大半を、メコン川とトンレサップで獲れる淡水魚が賄っています。パンガシウスなどのような大きなナマズが人気の食用魚ですが、グラミーやバルブのような小魚も重要な食材なのです。
焼きプラホック(提供:茸本朗)これらの小魚は一般的に塩漬けにされ、「プラホック」という保存食に加工されます。プラホックは我が国でいう味噌と醤油を兼ね備えたようなポジションの調味料で、副産物として作られたトゥックトレイとともに、カンボジアの食卓には欠かせない食材なのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>


