前回の「サケ科魚類の起源を考察してみる 元々は海水魚?淡水魚?(3/8)」では、進化と食性から降海型と河川残留型について説明した。今回は産卵におけるサケの生体と婚姻色について詳しく説明していこう。
降海と遡河(そか)
サケマス類は、山間部の渓流や湖沼に完全陸封された種以外の多くが、川と海を往復し生活していることが知られている。
北海道に生息するイトウは、勾配の緩い河川を好み、河川にエサの多い夏は上・中流域、冬は下流域から汽水域、沿岸部で生活。季節により、頻繁に生活域を変え、川と海を往復。
一方、シロザケは産卵から60日程度でフ化し、50日ほど卵のうの栄養分で生活したあと浮上し、ユスリカなどの小型水生昆虫の捕食を始める。フ化から半年程度で銀毛化して降海し、海洋生活に入る。
2~4年の海洋生活をへて母川に回帰し、間もなく産卵したあとその一生を終える。
イトウがエサの少ない冬のみ海を利用しているのに対し、シロザケは一生のほとんどを海洋で過ごす。
その中間に位置するサクラマスは、1年から1年半の河川生活の後に降海し、半年から1年を海で過ごして遡河。再び河川生活に戻り、半年後の秋に産卵、その一生を終える。
また、ギンザケやマスノスケでは、フ化後1~2年ほど河川生活して降海し、1年から6年を海で過ごして産卵のため遡河する。
さらに、シートラウトやスチールヘッド、アメマスなどは、何度も川と海を往復して河川生活と海洋生活を繰り返し、産卵も何年にも渡って行われる。微妙な違いだが、釣りをするうえで、河川内で摂餌行動を取るかどうかの違いは大きい。
海洋生活での違い
海洋生活においては、孵化、浮上後すぐに降海するシロザケ、カラフトマスは外洋の広範囲を回遊するのに対し、ギンザケやマスノスケでは近郊外洋、複数年に渡り産卵を繰り返す種では内湾や沿岸部での回遊に留まる。
北海道における種では、シロザケは千島列島を経由してベーリング海、アラスカ湾まで回遊するのに対し、カラフトマスではベーリング海まで、サクラマスではオホーツク海までと、進化が進むにつれて外洋を広く利用している。