「見えている魚は釣れない」とは、よく言われることだ。多くのアングラーの経験則からしても、この言葉は当てはまるのではないだろうか。特に足元でわいている魚など、どれだけいても、「釣れたためしがない」とさえ言えよう。なぜなのか?今回は見えている魚が釣れない理由について考えてみたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
見えている魚が釣れない謎
足元で見えている魚は、釣れないものだ。どれだけ大量無数にいても、あるいは1匹が明らかにくっきりと見えていても、そいつに餌やルアーを食わせることはできない。ほとんど間違いなく釣れない。
上の画像は、筆者の友人が送ってきたものだ。とあるヨットハーバーで、「明らかにチヌっぽいけど、これってチヌなの?」と聞かれた。この答えについては正確には言えないが、たぶんボラだろう。見えチヌもうようよいるが、こいつは頭が丸っこいからボラだと思う。
しかしそれよりも何よりもこのとき私の頭に浮かんだのが、「こういう見えている魚って絶対釣れないんだよな」というものだった。なぜだろう――その理由は、自らの経験から、いくつか想定はつく。
居着きの大型魚の場合
見えている魚にも、分類というか種類がある。ボラの大群、あるいは居着きのシーバスやチヌなどの中大型魚。その他アジやサバ、サヨリなどの小魚類。メバルもデイゲームでは目で見えることがある。
このうち、居着きの中大型魚やボラの大群については、まず、「魚からも人の姿が見えている」という理由が大きい。また、すでに一度以上釣られたことがある学習個体であるとも考えられる。学習した魚は簡単に食わない。
むかし、まったくスレていない穴場の見え見えブラックバスの群れに、ポッパーを投げるとアクションをする前に飛びついてきた。しかし1尾釣ってからは、まだまだ見えている状態でも一切食わなくなった。そういうものだ。
見えアジ等の場合
ライトゲームをしているとデイ&ナイト、見えアジや見えメバルと出会うことがある。
見えメバルはまれまれ「あいつを釣ってやろう」と狙ってうまいこといくと釣れる。しかし見えアジは難しい。見えアジになっているのは多くは表層の群れで、表層の群れは、やはり人の姿を常に感じている。物音や人の話し声、足音にも敏感で、明らかに警戒している。この手の魚は多くの場合プランクトン類を食べているので、ハードルアーやバレバレのソフトワームには用がない。だから食わない。
つまり、前提として、最初から見切られているのだ。
レンジを入れると釣れることも
見えアジ、見えメバルそのものを釣ることができないと割り切ろう。しかしアジもメバルもその他の小魚も、必ず群れ単位で行動していて、着いているレンジはひとつではない。見えている群れがいる限り、その周辺には必ずまだ見えていない別の群れがいる。
投げる向きをかえたり、手前の群れを追わず沖に投げて狙ってみる。何よりも有効なのは、レンジを入れることだ。特に見えアジは、居場所が特定しにくいアジングでは、釣り人が「ひゃっほー!」と叫びたいほどのヒントになる。レンジを入れて慎重に狙えば、必ずアタリが出る。見えている群れを釣れているのではなく、その周辺や奥にいる、見えない群れ=釣り人が見えていない魚たちを狙ってみよう。
高活性時には釣れることも
基本的に見えている魚は釣れないが、超高活性時は別だ。メバルやシーバスはこれがたまにある。追いかけてきて、バクッ。まあこれは、追いかけてくる途中から見える魚になったものなので、完全な見え魚とは言えないかもしれないけれど。
しかし見え魚が釣れるのは、基本的に例外的なことだ。見えている魚は魚影が濃いヒントにはなるが、釣れるものではない。「なるほど、魚はいるらしい」と思って、別のヤツを狙うイメージでいこう。
<井上海生/TSURINEWSライター>