素晴らしき1尾との出会いを求めて。アマゴの本流釣り【概要編】

素晴らしき1尾との出会いを求めて。アマゴの本流釣り【概要編】

先発組の渓流解禁が一段落。待望久しかったアマゴたちとの再会を果たした読者諸兄も少なくないはず。3月になるとほとんどの河川が川開きを迎え、あちこちで渓流師の姿を見る機会が増えることだろう。
この先、雪が解けて桜が咲き、芽吹きの季節へ向かって楽しみな出会いが待っているはず。メモリアルフィッシュとの出会いを夢見る同志諸君、しばしのお付き合いをお願いしたい。

この記事は『週刊つりニュース中部版』2017年2月24日号に掲載された記事を再編集したものになります。
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渓流釣り 淡水の釣り

本流釣りについて

本流釣りはひたすら流す釣りである。
ひと言でいえば、落ちてきたエサを目がけて魚が寄ってくるのが谷の釣りで、流れに定位したアマゴの口元まで、エサを送り届けるのが本流釣り。
線の釣りと言われるゆえんだ。

圧倒的な水量、天敵から身を隠す場所、豊富なエサなど、アマゴが成長する要素が渓流域に比べて圧倒的に多いのが本流の特徴だ。
しかし一方、泳ぐ犬、飛び込む子供、立ち並ぶアユ師、昨今ではボートやカヌーなど、釣り師からすると一見あまり歓迎できないものが多く存在するのも本流域である。

エサが多く隠れやすく、しかも始終人の気配が絶えない本流域をすみ家とするアマゴたちは、ほぼ例外なく人間たちにスレている。
当然釣りの難易度は高くなり、ノーフィッシュの日も珍しくないのが本流釣りだ。
それでもサオを振るのはいい魚に会いたいから。

折れそうになる心に喝を入れ、信じた流れに何度も何度も仕掛けを送り、ようやく出会えた野生には間違いなく顔がある。
記録を越えた記憶に残る魚だ。
それまでの苦労が一気に報われ、至福の空気に包まれる。
本流の大物釣りはそんな釣りである。

本流を攻め、数々の困難を乗り越えた先に出会うアマゴだからこそ、感慨もひとしお。

タックルのついて

サオの長さはポイントに合わせるのは当然だが、初めて一竿を選ぶなら7~9m、7.5~8.5m程度のズーム付きのものが良いと思う。

前述の通り、ひたすら流してエサを送り届けるのが本流釣りだから、ターゲットの着き場よりも上手にスタンスを取る必要があるし、できるだけ長い距離のトレースを稼ぎたいため、長ザオはこの釣りには不可欠になる。

硬軟さまざま販売されているが、0.3~0.8号のハリスが使用でき、軽過ぎないサオをチョイスしてほしい。
シーズン初期から終盤までフルシーズン使えるし、数釣りから大物まで全ての本流釣りに対応できる。

イトはフロロでもナイロンでも構わないが、繰り返し使用するならフロロがお勧めだ。
強度的にはナイロンの方が強いような気がするが、大物を獲った後や根ズレにはフロロカーボンの方に優位がある。

ターゲットによって太さは変わるが、4月以降なら最低でも0.4号程度のハリスは張るべき。
いつ掛かってくるかもしれない大物を獲りたいのなら、そのための準備は抜かりなく。
広くて深いのが本流だ。
当然ターゲットもパワフル。
太いハリスは流しにくいという前に、何度も使って慣れておくことが肝要だ。

本流釣りにおけるオモリの選択は極めて重要だ。
太イトで深瀬の底に潜んだアマゴの口元にエサを届けるには大オモリが必須。
しかし、重すぎれば底をかむし、流れに乗ろうとしたエサに不自然な動きを与えることにもなってしまう。

こんなときは、交換の容易なゴム張りガン玉が大変重宝する。
現場で私は、小さいガン玉でオモリの調整をしているが、外しやすいゴム張りでないと、釣りそのものが雑になってしまうほど。
少々値は張るが、ぜひともベストのポッケに携行したいアイテムだ。

ハリはターゲットの大きさと使用するエサで選択する。
私の場合、3月いっぱいはがまかつナノヤマメ6号か7号、それ以降はがまかつマスター渓流7.5号から8.5号を使い分けている。
数年前からナノスムーズコートを施したハリが発売されているが、こいつの威力は本当にすごい。
触れ掛かるがごとしとは言葉が過ぎるかもしれないが、本当にそんな感じの使用感である。
ぜひ一度試してほしい。

釣り場選択について

さまざまな情報がスマホ1つで得られる時代である。
水量や天候はもちろん、昨日の釣果まで、探せば見つかる大変便利な世の中だが、大切なのはそれらから何を得てどう動くかである。

どこの河川にも本流師が待ち構える有名ポイントがあるが、これらを知るにはそれこそネット閲覧が有効だ。
しかし、大切なのは、なぜその場所が有名ポイントとなり得たか、ということを理解することだ。
エサの多少や隠れ家の有無、伏流水の存在など、彼らは常に居心地のいい場所への移動を繰り返していることを覚えておいてほしい。

状況を判断して的確なポイントを導き出す。これも本流釣りの面白さ。

本流アマゴを狙える流域はまさに広範囲。
長良川を例に取れば、金華橋周辺から高須のエン堤まで、ほぼ全域が釣り場ではある。
しかし当然季節や気候、水量などの自然条件に加え、河川を取り巻く人的条件までを総合的かつ的確に判断する能力がないと釣果はついてこない。

1つ目の条件を「季節」としよう。
春先の水が冷たいころは、比較的下流部でもシラメなどが浮いて遊んでいるが、ゴールデンウイークごろになると遡上による移動が著しくなり、6月の声を聞けば美濃や関辺りでは厳しい釣りを強いられ、釣り場は八幡周辺よりも上流ということになる。

2つ目を「水量」とするのなら、増水直後であればエン堤直下など遡上の妨げとなる人口建造物などがポイントとなるが、仮に遡上期であったとしても、雨が遠く渇水気味であれば大抵魚は留守である。
さらに「人的条件」を加味すれば、アユ師が瀬に大勢立ち込めば必然的にアマゴは淵に追いやられ、子供が飛び込む季節なら日中は水底深く潜んで朝夕のマヅメ時に集餌活動をする……。
ということになる。

分かってもらえただろうか。いつも同じポイントを狙っていては魚に出会う確率が減ってしまうという事実を。

アマゴになったつもりで場所を選び、時には一級ポイントでも見切る勇気を持とう。首をかしげてしまうような場所でもサオを出してみよう。
必ず一歩前進するはずである。

<週刊つりニュース中部版 冨田真規/TSURINEWS編>