皆さんは「低利用魚」についてご存じでしょうか。市場でもあまり値段がつかず、少ししか利用されていない魚種のことを指します。そんな低利用魚の中で、「トビイカ」を使った商品が、「sakana bacca」で6月16日(金)より発売されたので、詳細についてご紹介していきます。
(アイキャッチ画像提供:フーディソン)
低利用魚とは
低利用魚とは、人々にあまり認知されておらず、市場に出回ってもあまり価値が付かない魚のことを指します。市場に出しても大した値段が付かない為、漁獲して食用にはならずに肥料になるのが現実ですが、調理や下処理の仕方次第では美味しい食材に変身します。近年では、この「低利用魚」を使った美味しい加工商品が発売されるようになりました。
低利用魚の種類
そんな低利用魚について、代表的な魚種を特徴ごとにまとめました。どの魚種もクセはありますが、処理の仕方や手間をかければ美味しい魚ばかりです。
毒のある魚
アイゴ: 通称「バリ」といい、尾びれと背びれに毒針があります。毒針がある点が低利用魚になってしまう大きな理由のひとつですが、それだけではありません。アイゴは主に磯に生えている海藻類を捕食する魚で、この食性が内臓を磯臭くしてしまいます。その為、漁獲した直後に内臓を傷つけずに処理する必要がある面倒くさい魚ですが、綺麗に内臓を処理できれば、非常においしい魚でもあります。
小骨が多い魚
ウツボ:堤防や磯で代表的な外道で、「海のギャング」の異名があります。全長が大きい為、ぷりぷりの身が詰まっているように思えますが、実際は身以上に小骨が非常に多く、取り除くのに苦労する面倒くさい魚です。また、ヌメリも強く捌きにくいです。しかし、手間をかければ、コラーゲンたっぷりの美味しい食材に変身します。
見た目が微妙な魚
イラ:海の海底に棲む魚で、船釣りや、定置網で漁獲されます。見た目が色鮮やかな為、どうしても美味しそうに見えません。また鱗が大きく処理が面倒臭いですが、下処理をクリアできれば見た目と反した綺麗な白身が姿を現します。刺身やムニエルで美味しくいただけます。
「いちゃキムチー」
生鮮流通プラットフォームを展開する株式会社フーディソンは、2023年6月16日(金)より、魚屋「sakana bacca(サカナバッカ)」にて、沖縄県産のトビイカをキムチ味にした加工品「いちゃキムチー」を販売します。
本商品は、沖縄県漁連から船便にて仕入れた冷凍のトビイカ200kg分を青森県八戸市の水産会社(*)に製造委託し開発しました。先行して飲食店向け鮮魚仕入れサイト「魚ポチ(うおぽち)」に掲載しており、既に購入飲食店への納品をはじめています。
(*)いちゃキムチ―の製造は、青森県八戸市 鮮魚・水産加工品の販売会社「マルヌシ」へ委託
低利用魚の「トビイカ」とは
「トビイカ」は、ツツイカ目開眼亜目アカイカ科の一種で、全長30~40cmのイカです。名前の通り、海面上をよく飛ぶことが名前の由来となっています。この「トビイカ」は、沖縄県ではよく食べられていたイカで、昭和40年代には300tを超える水揚げがあり沖縄の食文化として根付いていましたが、近年は30t程と減少しています。
その背景としては、モズク養殖やマグロ漁業への漁業転換、またトビイカは他のイカ類より味が落ちることから高値が付かない傾向にあるといったことが挙げられており、今では低利用魚種のひとつとなってしまっています。沖縄県は、水揚げ量の減少と世代交代によって食文化自体がなくなってしまうことを危惧しており、需要と食文化の存続に向けてトビイカの魚食普及を推進したいと考えています。
参照:沖縄県水産海洋技術センター (低利用資源トビイカの漁協事業連携)
商品開発者の想い
株式会社フーディソンで「いちゃキムチー」の開発に携われた、星野健一郎さんの商品に対する想いを紹介していきます。
トビイカの評価
トビイカは加熱すると固くなったり生では甘みが感じられないといった品質の評価から、商品開発が難しいジャンルのイカでした。本来であればこういったイカを商品化しようと思わないのですが、沖縄県漁連様から相談いただき、なんとかしたい想いでチャレンジしてみることにしました。
試行錯誤
試行錯誤の末、ひらめいたのがキムチのような味でした。たまたま食の展示会でバイヤーメンバーが持ち帰ってきた「ピリ辛のタレ」のサンプルが目につき「ピリ辛のタレは、トビイカの負の部分を消して、美味しくなるのでは?これは、キムチのような味だったら合うのではないか」と、思いつきました。
試作の結果、トビイカのねっとりしたよい食感があり、生でもおいしく食べられる状態になりました。まだチャレンジは始まったばかりなので、引き続き仕入れ、販売量を拡大していきたいです。