サオやリールにこだわる人は多いが、電動リールの相棒であるバッテリーについては無頓着な人もいるのでは?今回、電動リール用バッテリーについて解説するとともに、今やスタンダードとなっているリチウムイオンバッテリーについて紹介する。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWS編集部 立石)
電動リール用バッテリーの種類
電動リール用バッテリーには、鉛バッテリーとリチウムイオンバッテリーがある。鉛タイプは安価だが非常に重く、性能もリチウムタイプに劣る。
一方、リチウムタイプは高価だが圧倒的に軽量でコンパクト。同クラスの容量(電気を蓄える量)なら、鉛タイプの3分の1程度の重さだ。さらに、電気を供給する能力(放電能力)に優れ、モーターを瞬時にして高回転へと導くのが特徴だ。
リチウムタイプと鉛タイプの比較
リチウムタイプ/鉛タイプのバッテリーの性能を比較してみよう。
放電能力とリールの回転力
電動リールのモーターに向かって一度に放出される電流が大きいほど、モーターは短時間で最大回転数に達し、回転も強くなる。この回転力を生み出す放電能力でリチウムタイプは鉛タイプに大きく秀でる。
実際に各バッテリーを同じ規格の電動リールに接続して回転させると、モーターの回転速度や回転音に大きな差が生じる。
モーターの回転力が高まることで得られる実釣でのメリットは以下の通り。
まず、根に突っ込む魚とのファイトにおける優位性。アワセた直後にリールが最大巻き上げ力を発揮すれば、魚の走りを抑え1秒でも早く、1mでも遠く魚を底から遠ざけることができる。
次に、誘いの応用力の向上。電動ジギングやタチウオ、イカ釣りではリールの回転に緩急をつけて多彩な誘いを行う。鋭い巻き上げが可能ならば、誘いの幅も広がる。
そして、巻きアワセを用いるケース。ミチイトやハリスをフカせての釣り、巻き誘いする釣り、置きザオで待つ釣りでは、唐突に生じたアタリに対し、サオでアワセるより、鋭く巻きアワセを入れたほうが効果的な場合がある。
電圧(V)と容量(Ah)
電動リール用バッテリーには12V・12Ahなどと表記されている。「V=電圧」はリールを可動させる力、「Ah」は容量(蓄電量)だ。
ちなみに、同じ容量でも鉛タイプとリチウムタイプでは、電池としての持続力に大きな差がある。以下、標準的な規格の鉛とリチウム両タイプについて、今回の記事作成で協力を得たバッテリーメーカーのビーエムオージャパンが行った放電テストの比較データを紹介する。
テスト内容/60Wで放電(電力を消費)を行い、電圧と放電可能な持続力を測定。
鉛バッテリー/定格出力12V-12Ah
放電開始時の最大電圧=13V
放電持続時間=約80分
リチウムイオンバッテリー/定格出力14.4V-13.2Ah
放電開始時の最大電圧=16.8V
放電持続時間=約175分
ご覧の通り同クラスの容量でも、持続力には2倍の差がある。
また、リールの巻き上げ力を比較するテストでは、リチウムタイプは鉛タイプの3割り増しの巻き上げ速度(回転力)をリールに発揮させた。
保管時の手間
バッテリーは、残量がゼロのまま放置してしまうと再充電不能になってしまう。鉛タイプは自然放電による消耗を気にかけ、満充電にして保管し、こまめに減りを確認する必要がある。
リチウムタイプも残量管理は必要だが、自然放電に対する耐性が高いので長期保管に強く、残量チェックの頻度を減らせる。保管開始時に残量が半分以上あれば、そのまま保管可能だ。とはいえ、長期間の放置はNG。自然放電しにくいとはいっても、完全放電(残量ゼロ)してしまうと再充電不能になる。月に1回は残量をチェックしてほしい。
洗浄と保管方法
ボディに付着した塩分などを流水でサッと流し、落ちにくい汚れは湿らせた布でこすり落とす。洗浄後は全体を噴き上げ、高温多湿を避けて保管する。濡れたままの保管は故障やショートによる発火の原因になるので絶対に避けよう。
バッテリーには防水措置が施されているが、高圧洗浄したり、水にドブ漬けするのはさすがに不可。また、端子に塩分や汚れが付着したままだと、腐食や通電不良の原因になる。
なお、リチウムタイプの場合、保管開始時の電池残量は半分がベスト。「うっかり完全放電」が心配な人は、8割程度充電して保管することをお勧めする。