北海道で「春ニシン」のシーズンがスタートしました。春ニシンの魅力といえばやはり卵巣(数の子)ですが、もし数の子が入っていなくても残念に思う必要はありません。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
春ニシンのシーズンがスタート
北海道の日本海側など、北日本の沿岸で春のニシン漁が本格化しています。ニシン漁は年に2回行われており、10~12月に漁獲されるものを秋ニシン、3~5月に漁獲されるものを春ニシンと呼びます。
春ニシンは産卵のために接岸する群れで、秋のニシンと比べるとやや脂が少ないが、数の子が入っているので人気が高くなっています。接岸量が多い年は、北海道の沿岸では釣りで狙うこともでき、密かに人気の釣り物となっているようです。
ニシン豆知識
ニシンは北の海の魚で、日本海側では富山以北、太平洋側では千葉県の犬吠埼以北に分布し、動物性プランクトンやオキアミ類を食べながら回遊しています。当然ながら漁獲も北に偏っていますが、かつては食材や肥料として全国に流通する重要な魚でした。
とくに冷蔵技術がない時代には、内臓を取りカチカチに干し上げた干物である「身欠きにしん」の形で広い地域で利用されていました。
「ニシン」という名前はこの身欠きにしんに由来するという説があり、1匹のニシンから、左右の身で2枚分の身欠きを作れることから「二身(にしん)」となったと言われています。
安価な上に保存性が高いため、各地で保存食とされ、貴重なタンパク源、また内陸でも食べられる貴重な海産魚として重宝されました。京都名物の「にしんそば」はその名残です。
春ニシンの魅力は「白子」も
ニシンの漁獲量は一時期と比べたら回復傾向にあるものの、昔と比べると非常に少なく、その卵巣である「数の子」も年々高級になっていっています。ニシンの干物も数の子入りのものは値段が高く、「あとから別の個体の数の子を入れ込んだ干物」も作られるほど。
ニシンは外見からはオスメスの区別がつかず、腹を割いて白子(精巣)が出てくると「数の子じゃないのか」とがっかりされてしまうことが多いようです。しかし実は、ニシンの白子は魚の中でも屈指の美味しさを誇ります。
ニシンの白子は青魚のものなのに生臭みがなく、とろっとして風味が濃厚。湯引きのようなシンプルな料理でこそ輝く味で、何倍も高価なタイやフグの白子にも全く負けていません。
残念ながら流通することはあまりなく、基本的には産地で消費されてしまうものですが、もしニシンを鮮魚で購入する機会があれば、ぜひ白子を単体で楽しんでほしいなと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>