普段の食卓では滅多に目にすることがないクジラ肉。今回はクジラ肉の消費量が日本一の長崎県で生まれ育った筆者が、意外と知られていないであろうクジラ料理とその味をレポートしてみます。
(アイキャッチ画像提供:日野商店)
全国一のクジラ肉消費量の長崎県
筆者が生まれ育った長崎県はクジラ肉の消費量が全国一と言われています。2008年の調査ですが、日本でのクジラ肉の1人あたりの消費量は50.4g。一方の長崎県は177.4gらしく、なんと全国平均の3倍以上も食べられているようです。(引用:『長崎webマガジン』)
とは言うものの、毎日クジラ肉を食べていたわけではありません。学校給食でクジラ料理が出てきたり、親戚が集まった時に持ち寄ったりするなど、年に数回食べていました。ただ振り返ってみると、定期的にクジラ料理を食べる環境にいたというのもなかなか珍しいのではないでしょうか。
筆者の場合、物心がついた頃には既に「クジラ=食べ物」という認識を持っており、たまに食べることができるご馳走のような存在でした。今でも帰省時には食べることが多く、ちょっとした「ふるさとの味」と言えるかもしれません。
縄文時代から続く捕鯨文化
日本では古来より貴重なたんぱく源として食されてきたクジラ肉。鯨漁の歴史はとても古く、少なくとも捕鯨の痕跡は縄文時代にも見られるそうです。
長崎を例に挙げると五島列島近海で捕鯨を行っていたらしく、「クジラ一頭で七浦(七つの村)が潤う」と言われるほど地域の食と経済を支えていたようです。近年では個体数の減少もあり調査捕鯨のみが許可されていましたが、2019年には捕獲数が定められながらも商業捕鯨が再開されています。
クジラ肉の様々な部位
そんな歴史的な背景を持つクジラ料理。実は牛肉や豚肉にロース、赤身、モツといった部位があるように、クジラ肉も部位ごとに味や食感、価格が異なります。
例えば、さえずり(舌)は脂が多く煮込み料理に向いていたり、赤身はさっぱりした万能な部位で刺身で食べられたりします。同じ部位でもクジラの種類によって味が異なるのも面白いところです。日本ではミンククジラ、イワシクジラ、ニタリクジラの3種類が主に食用として流通しています。
クジラ肉の味とは?
クジラ肉は調理方法によって食感や香り、味も変化していく面白い食材です。筆者が今まで食べてきたクジラ料理の味を食レポしてみたいと思います。
クジラの刺身
筆者が今まで一番食べてきたのがクジラの刺身。一般的な魚の刺身と同様、素材の味をダイレクトに味わえるのが特徴で、赤身や畝須【うねす】(下あごからへその手前までの部分)から加工されたベーコンを食べていました。
生臭さはないのですが、クジラならではの鼻抜けする匂いがあります。表現が難しいのですが、他の魚介類の肉とは明確に違う「哺乳類っぽさ」とでも言うのでしょうか…。
刺身で食べると肉よりは魚に似た感覚で、クセになると箸が止まらなくなるくらい美味しいです。赤身はさっぱりとしているので刺身醤油で、ベーコンはコリコリとした歯ごたえがあり酢醤油やポン酢と相性が良いです。
お酒との相性も抜群で、筆者の場合はビールや焼酎とセットになることが多いです。やはりと言うべきか、徐々に食べたくなってきました。
クジラカツ
揚げ物好きにはたまらないクジラのカツ。クジラ肉は熱を通すと非常に柔らかくなり、食感はどちらかというと魚に近いです。個人的にはちょっと肉っぽさも感じる「マグロのカツ」に近いですが、脂はほどよく抑えられていると思います。
牛肉や豚肉ほどの「脂のじゅわっと感」はありませんが、旨味の量はそれらに負けていません。クセがなく万人受けする味なので、長崎では駅弁として「クジラカツ弁当」が販売されているほど。タレでしっかりと下味がついているので、冷めても美味しく食べることができます。
部位にもよりますが、クジラ肉は牛や豚と比べるとローカロリーなので「揚げ物を食べたいけどカロリーは抑えたい…」という方にもオススメ。ダイエット中でもちょっとだけ許された気持ちになります。
口の中によだれが出てきました・・・。
クジラの肉じゃが
個人的にイチオシなのがクジラの肉じゃが。魚を煮付けると匂いが際立つように、クジラも煮物にすると「クジラの匂い」がします。独特な香りではありますが、決して嫌な匂いではありません。どうしても気になる方は、別の鍋で下茹ですると匂いも感じにくくなります。
クジラの旨味が他の具材にも染み込むので、一料理として見ても秀逸な仕上がり。クジラの味を味わいつつも、脂が少なめでさっぱりと食べることができるのが魅力です。
もうたまりません。今すぐ実家に帰ってクジラ料理を食したい気分です!