欧州では意外とごちそう? 『コイ』の食用魚としての側面を紹介

欧州では意外とごちそう? 『コイ』の食用魚としての側面を紹介

「ニシキゴイ」に代表されるように観賞魚としての側面が強いコイ。一方で、土地や時代によっては重要なタンパク源なんです。同魚の食用としての側面を紹介します。

(アイキャッチ画像提供:野食ハンマープライス)

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コイは「観る」もの?

日本の淡水を代表する魚であるコイ。あらゆる河川、池沼、湖に棲息しており、日本人にとても馴染まれ愛されています。流線型の大きなボディやゆうゆうと泳ぐさまなどはまさに淡水魚の王様と言っても過言でなく、こいのぼりなど男らしさのモチーフとしても扱われていました。

欧州では意外とごちそう? 『コイ』の食用魚としての側面を紹介庭の池にピッタリの観賞魚(提供:PhoteAC)

コイといえばすぐさまニシキゴイを想像する人も多いように、コイは「観賞用」というイメージが強い魚です。自然環境下にいるコイでも、餌付けされて実質的なペットとなっているものがたくさんいます。

しかし、世界的に見ればコイはむしろ「食用魚」としての側面が強いのです。

コイは「食べる」もの

日本のような島国と違い、ヨーロッパなどの大陸では海に面していない地域も多いため、海水魚と並び淡水魚も一般的に食用にされてきました。その中でもコイは何でも食べて成長が早く、身の味も良いため、よく利用されてきたのです。

とくにコイを愛する地方として知られているのが、フランスの南アルザス地方と、国境を挟んで隣接するスイスのジュラ地方。アルザスには「コイのフライ街道」なる道があり、年に1度「コイ尽くし祭り」が行われるほど人気のある食材なのだそうです。(『「鯉」のフライ街道を歩く』もっと知りたい!スイス生活,2015.9)

土地名物の「コイのフライ」は、切り身を数度に分けて揚げ、自家製のマヨネーズを付けて食べるというもので、コイを食べるときの難点でもある小骨の多さを感じさせなくする調理法なのだと思われます。

また東欧諸国でもコイは食材として愛されており、「コイのビール煮」は著名な料理です。香味野菜とコイの切り身を大量のビールで煮るというもので、ビールの香りと爽やかな苦味が濃い独特の臭みを消しており、とても美味です。

欧州では意外とごちそう? 『コイ』の食用魚としての側面を紹介たっぷりの香草とともに煮込む(提供:野食ハンマープライス)

チェコではコイはフライやスープにされ、クリスマスメニューの定番でもあるとのこと。(『チェコのクリスマス料理の定番、鯉にまつわるエトセトラ』エイビーロード,2009.11)

このほか、中華ではコイの姿揚げにあんかけをかけた料理が有名です。これも揚げた上に黒酢の餡で二重の匂い消しをしており、魚が苦手な人でも美味しく食べることが可能です。

日本でもかつては食用にされていた

日本でも、地域によってはコイは食用にされています。彼らは用水路や溜池で容易に飼育できるため、山間部における貴重なタンパク源でした。長野県や福岡県などでは現在でも盛んに食用にされ、スーパーマーケットでも購入することができます。

欧州では意外とごちそう? 『コイ』の食用魚としての側面を紹介活けものを買って調理することも可能(提供:野食ハンマープライス)

自ら釣る場合の注意点

もちろん、我々も自分で手に入れて食べることは可能です。その場合、都市河川などは避け、できるだけ水質の良いところで採ったものを利用することと、胆嚢に強い毒を持つ場合があるので捌く際に注意することの2点だけご注意ください。

欧州では意外とごちそう? 『コイ』の食用魚としての側面を紹介胆嚢は絶対に破いてはいけない(提供:野食ハンマープライス)

コイはゼラチンが豊富で良い出汁が出るうえ、栄養も豊富とあって、地域によっては「産後に食べる魚」として珍重されたこともあったそうです。我々現代人も「身近なタンパク質」としてもっと利用してもいいものではないかと思います。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>