立春を過ぎた辺りから、冬眠から目覚めたばかりのヤマメが捕食のために少しずつ流速のある流れへと泳ぎ始める。3月1日に解禁を迎えた、九州エリアの渓流ヤマメ・アマゴ釣りを徹底解説。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース西武版 APC・津曲隼丞)
渓流釣りのアタリ
渓魚が定位する筋に自然に流すと、渓魚も安心して口に入れるためか、目印が止まったり、震えたり、沈み込んだり(目印を抑え込む感覚)と、明らかに根掛かりと異なる反応がある。この場合は、反射的に早アワセせず、半呼吸置いてからアワせるくらいがちょうどいい。
時には、釣り人のアワせ損ねや渓魚の食い損ねによるバレが生じることもある。こんな時には、まずエサを替えること。そして、1匹掛けから2匹掛けにしたり、目先を変えることが重要。多くが再びアタリとして反応することだろう。決して、前回の食い欠けた同じエサを無頓着に使ってはならない。
一番アワせにくいアタリは、先行者後を釣るスレた渓魚を狙う場合だ。口先だけでエサを軽く噛むだけの低活性の個体やカサッと目印が揺らぐだけの個体もいる。一番に対処できるのはハリや0.125号前後の極細イトへの交換。ハリは気軽に交換できるので、刺さりの良い細軸バリはベストに忍ばせている。ほかにも悟られにくいソリッド穂先も対策のひとつ
サカナとのやり取り
やはり、一番の醍醐味は、ヒット後のやり取り。渓魚も魚種によって引き味が異なる。ニジマスは直線的なスピード感ある強烈な引き込みで、時には派手なジャンプを繰り返す。よって、場荒れ予防で少し強引にでもポイントから外してやり取りを楽しむ。本来九州にいないイワナは、スピード感は少ないものの、石底へ潜る重量感と首振りを頻繁に起こす。
やり取りで一番難しいのは、ヤマメ・アマゴ。とにかく良型がヒットすれば、流れに乗ってローリング(体を捻じり回転させる)しながらハリ外しの行動を取る。それでもハリ外しが困難と悟れば、得意の突進速度を上げて、上下流、川底へ瞬時に走り回り、すきあれば石裏に逃げ込む行動を取る。この瞬間にイト切れやハリ外れを起こしやすい。
私の経験に基づく対策は、ヒット直後は、サオを約45度倒し(上ザオ)、サオのパワーを生かしてサオをしっかり曲げてタメること。これを生かすために開けた本流や里川では胴に乗る胴調子を多用している。
ヒット直後は上ザオでサオをしっかり曲げて(タメて)、最初の疾走を止める。走りが止まれば、時には腰を落として立てザオでテンションを掛け獲物の体力を奪う。再度獲物が走れば上ザオに戻しタメる。
掛かれば、最初の走りを何としても止めて、大人しく泳がすことを第一に考える。時には、その思いと反して流れを利用して下流へ突進する個体もいる。その時は、私自身も獲物と一緒になって必死に走ることもある。獲物を自分の正面に管理するように努め、獲物と自分の距離を一定間隔に保つこと。暴れる魚には、少しサオの曲がりを戻してあげれば大人しくなりやすい。
一番注意しなければならないのは、石裏、石底へ逃げ込む行動。サオのテンションを緩め過ぎると主導権が獲物に渡り、ラインブレイクとなる。獲物の体力を奪う武器は、立てザオでテンションを与え続け中層を泳がせること。決して水面には、まだ出してはならない。
操作は、上ザオによるタメと立てザオによるパワーを上手く駆使し、獲物の体力を次第に奪っていく。次にどこで取り込むかを考える。通常は流れの緩い淵などへ誘導する。溶存酸素の少ない淵は獲物の弱りも早い。
もしも、移動できない流速のある荒瀬で掛けたら、急流でスリリングな激闘を繰り広げることになる。その時は少しでも流れの緩い筋へ誘導したい。流心から獲物を外すために、切り返しというサオを曲げた状態で、サオを180度反対側へ可動し返す技を積極的に取り入れる。最後は、石裏のたるみへ誘導し、口を出し浮かせたところを取り込む。
サカナの取り込み
やり取りで獲物が弱り、水面下に浮き始めたら取り込み体勢に入る。魚を引き寄せるためには、右手で持つサオの柄(グリップ)を上部後方へ少しずつ持ち上げ、サオ尻を獲物側に向けるとサオは後方に倒れ、獲物は自分の所へ寄ってくる。
とどめを打つために、浮いた口に空気をいっぱい吸わせてやること。獲物が止まり横たわれば、腰に差したタモを手に取り、頭からタモへ誘導し取り込む。決して焦って自分から獲物を追い回し取りに行かないことだ。
これらは良型を想定したやり取りだが、20cm以下の小型は、引き抜きという方法で、魚が弱まれば獲物を水中からサッと引き抜き、空中を飛ばしタモにキャッチする。場荒れも少なく済み、キャッチがきれいに決まると面白い技。コツは、左手で握るタモの柄の上部を握ること。タモ枠寄りの柄を握ることにより、キャッチが安定する。
<週刊つりニュース西部版 APC・津曲隼丞 /TSURINEWS編>