鮮度の良い魚は口に入れた瞬間わかります。
人に食べてもらって『店で食べるより美味しい!』と言ってもらえると丁寧に締めた甲斐がありますよね。今回は漁師直伝の魚の締め方の手順と極意を紹介していきたいと思います。
魚を締める手順について
魚は痛覚が無いといわれることもありますが、しかし刃物などで身を傷つけると暴れるので、筆者は魚にも痛覚があると思いながら締めています。
漁師さんから教わったことと、これまでの実体験での実験結果を踏まえて導き出した手順は、次のようになります。
1. まずピックなどで眉間を突いて脳死させる
2. エラに刃を入れて血管を切る
3. 尻尾にも刃を入れて血を出す
4. 神経締めをして身が痛まないようにする
人によっては尻尾は傷をつけないなど、締める手順が違うと思います。
脳死について
まず脳死をさせるのは、魚のストレスを最小限に抑えることで暴れるのを防いで身を傷ませないこと、以後の処置をしやすいようにするのが目的です。
基本的には、魚の目の上の眉間をアイスピックのような先の鋭いものやナイフなどで刺します。
眉間が硬い骨に守られている場合は眉間の横などから刺します。
刺したときに魚が口を開いたらしっかり脳締めができています。
タオルなどで目を隠すか尾っぽを持ちU字にそると暴れにくくなります。
脳死をさせた後は素早く次の処置を行いましょう。
神経は脳死をさせてからも活きているため、素早く行わないと魚にストレスがかかります。
血抜きの方法
血抜きは魚の生臭さを少なくする効果があります。
刺身を食べたとき「この魚は血が回ってる」などと聞いたことがないでしょうか?
これがきちんと血抜きをしているか、していないかの違いになります。
1番良いと考える方法はエラを綺麗に取り除くことですが、数を釣った場合は時間がかかります。
そこでオススメするのが「魚の体から近いエラの2番目」を切る方法です。
これは漁師さんから教わった方法で、手早く血を抜きやすいからという理由だと思います。
神経締めについて
魚の味は、ATP(アデノシン三リン酸)の残量で決まるといわれています。
ATPは魚が暴れることで分解が進みます。
すべてのATPが分解されると死後硬直が起こり、死後硬直が終わると旨味となるイノシン酸の分解はじまります。
神経締めは、このATPの減少を抑えて死後硬直までの時間を大幅に伸ばし、かつ暴れさせて身を痛めさせないために行うものです。
死後硬直が先に進む前に髄液を抜いて細胞を破壊することで、死後硬直を遅らせることができるのです。
神経締めは慣れるまでは難しいですが、コツを掴めば素早く行うことができます。
アイスピックの様な先の尖ったもので眉間を刺して脳死させた穴から、針金や神経締め専用器具を側線方向に入れていきます。
神経は背骨の上側にあるので、魚の側線の少し上を狙って通していきます。
針金が神経に到達すれば魚がビクビクと震えて成功、そのまま尻尾の方まで貫通させると色が変わります。
現在では神経締め専用セットが市販で売っています。
アイスピックと2~3mmの針金でも神経締めは可能です。
針金を使う場合1cm刻みで浅い切り込みを入れると、溝が神経に引っかかってより髄液が抜きやすくなります。
髄液を抜くときには針金を5~10回通してしっかり髄液を抜くことをオススメします。
自然死と締める事での鮮度の違い
以前、旨味を測定する機械を使い、どのような締め方にすれば旨味を維持できるかという実験をしました。
1. 自然死
2. 脳締めと血抜き
3. 脳締めと血抜きと神経締め
すると1→2→3の順に旨味を維持できることがわかりました。
1より断然3の方が結果が良かったです。
しっかり釣った後の処置をするということは、大事な命をいただくという意味でも良いことだと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。