春といえば陸上ではサクラの季節だが、海中ではワカメの季節。今回は魚ではなく、おいしいワカメの見分け方を、奈良県中央卸売市場の丸中水産株式会社勤務の著者が紹介する。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・有吉紀朗)
ワカメで免疫力アップ
新型コロナウイルスによる肺炎への不安が高まり、ドラッグストアやコンビニエンスストアでマスクや消毒薬の売り切れが続出している。新型肺炎は収束する気配がなく、しばらくは感染への不安が続くと考えられる。特に免疫力が少ない人は注意だ。そこで、免疫力アップに効果的なのが海藻類だ。
これからの季節のかわり目には身体の免疫力も下がり気味になり、ウイルスだけでなくあらゆる病気にかかりやすくなる。ひな祭りからGW前後に旬を迎えるのが、海藻と貝類だ。ひな祭りに御馴染みのハマグリもアサリも、ワカメもアオサも今が旬。
GW過ぎごろに投げ釣りをしていると、ミチイトやオモリに海藻が絡み付くことがあるが、これは多くの海藻が水温の上昇とともに切れて流れているからで、生のワカメなど多くの海藻はそれまでの時期しか食べられない。
だから干す技術や塩蔵といった貯蔵方法が古くから行われてきた。今回はこのワカメをピックアップしたい。
ワカメ
釣りをしない子供や女性に海の中の絵を書いてもらうと、ほとんどの人がワカメを緑色に書いているが、生ワカメは茶色(褐色)で茹でると鮮やかな緑色にかわる。
このワカメがフコイダン、ビタミン類、カリウムなど免疫力のアップと代謝に必要な栄養素を豊富に含んでいる。また低カロリーで脂肪を燃焼させるフコキサンチンも多く、ダイエットにも効果的。
しかし摂りすぎは注意。ヨウ素というミネラルを豊富に含んでいて、甲状腺に異常をきたすこともあり、50代以上の女性で特に甲状腺がんのリスクがあがることもある。またワカメを多く食べると髪の毛がフサフサになると言われているが、科学的根拠はない。
筆者は53歳になって気がついた。
ワカメの見分け方
ワカメは南方系と北方系に分かれる。茎があまり長くならない南方系のナルトワカメ(鳴門ワカメ)、茎が長くなる北方系ナンブワカメ(三陸ワカメ)があり、葉が薄くシャキシャキしているのが好みなら、南方系を。一方で、三陸ワカメは葉が厚く、歯応えが軟らかいのが特徴だ。ボイルすれば三陸ワカメのほうが濃い緑になる。
生ワカメを購入する時に注目するのは、葉の状態。古くなれば溶けるような感じになる。これは買わないほうがいい。塩ワカメはきちんと脱水されているか塩が残りすぎていないかを見る。
ワカメのバリエーション
一口にワカメといっても、生、塩蔵、メカブなど、いろいろなバリエーションがある。ここではそれぞれの特徴を紹介したい。
ボイル生ワカメ
ほとんどのメーカーが塩蔵ワカメをボイルしたものを生ワカメと書いて売っている。1年中ボイル生ワカメが売られて品質、味も安定している。国産のワカメのほうが韓国や中国からの輸入ものより葉が厚い。サラダでも鍋、みそ汁にも使える。
生ワカメ
地域差はあるが1から5月くらいまで限定でしか食べられない。生ワカメは養殖と天然があるが、養殖の定義が飼料を与えて大きくしたものと解釈されているので、スーパーで売られているものは養殖表示がされていない。ワカメの養殖は胞子を付けたイトをロープに編み込み、それを海中に吊るして成長させるので、エサはやらない。天然は水深10mまでの岩場や消波ブロックに付着する。
味も形も養殖と天然との区別はできないので、ワカメを購入する時は気にする必要はない。ただ潮が速い場所ほど葉が分厚い感がある。産地は宮城や岩手などの三陸産、兵庫産が多い。冷凍するならボイルしてから。オススメの食べ方はシャブシャブ。水温の上昇する終盤の大阪産はヨコエビやワレカラ等の甲殻類が付着していることが多い。
生メカブ
カップに入った味付けメカブは年中売られているが、生メカブはこの時期しか食べられない。シャブシャブ程度に湯がき、粘りが出るまで細かくたたく。
茎
安く売られていることが多い。冷凍をするならボイルをしてからがいいだろう。細かく刻みサラダにするが、シーズン終盤になるにしたがって硬くなる。甘辛くつくだ煮にしたものは我が家の人気ナンバー1で、なめ茸がよく合う。
塩ワカメ
塩蔵での宮城、中国、韓国産があるが、中国、韓国産は葉が薄く、やわらかい傾向がある。加工品を購入する場合は、原産地と加工場所が別ということが多いので表示をよく見ること。水で塩を洗う時にほぼ元に戻る。水に浸し過ぎると食感が損なわれるので注意が必要。
乾燥ワカメ
素干し、灰干し、細かく切ったカットワカメがある。戻すと10から20倍位になるので分量に注意したい。味噌汁になら乾燥のまま使える。味噌を溶いた後に入れるのがいいだろう。
採取する場合の注意
ワカメは漁業権の無い海域、あるいは漁業権を持つ漁協が許可している海域でしか採ることができない。釣りをしていると見かけることもあるが、注意してほしい。
<有吉紀朗/TSURINEWS・WEBライター>