まもなくお正月。お正月といえばおせちやお雑煮のイメージが強いですが、その地方ならではの郷土料理が実はたくさんあるんです。今回は、北海道~東海エリアまでの魚を使ったメニューを紹介します。
(アイキャッチ画像提供:Pixabay/PhotoAC)
北海道【飯寿司(いずし)】
いずしとは、魚、米麹、塩漬けした野菜・山菜を樽の中に交互に入れて漬け込み、 乳酸発酵させた「なれずし」の一種です。
いずしは「飯寿司」や「飯鮨」と書きますが、これをそのまま読むと「いいずし」となります。この「いいずし」 がなまり、 「いずし」と呼ばれるようになったとされています。
北海道や東北地方の港町ならではの食べ物で、冬の保存食として年末やお正月には、欠かせない郷土料理として食べられてきました。
魚をどのように美味しく保存できるか考えられ開発されたのが「飯寿し」です。海から吹きつける寒風で急激に気温が下がるときに、低温でじっくりと熟成させます。
東北【じゃっぱ汁】
青森県を代表する冬の魚と言えばタラ。
正月は俗に「タラ正月」と呼ばれ、捨てる部位の無いタラを1匹まるまる使った「じゃっぱ汁」を食べるのが冬の風物詩。
「タラのじゃっぱ汁」は、タラを丸ごと食べるため合理的な料理です。
「じゃっぱ」とは、魚を三枚におろして残った頭や骨、内臓を総称して呼ぶ津軽弁で、共通語では「あら」にあたります。
ぶつ切りにしたタラの「じゃっぱ」と大根、白菜、豆腐、ネギなどを煮込み、味噌や塩で味付けした「じゃっぱ汁」は、津軽の冬には欠かせない郷土料理となっています。
関東【おでん】
正月のおせちに欠かせない一品と言えば「かまぼこ」でしょう。
江戸時代より始まった小田原のかまぼこは、豊富に湧き出る小田原の地下水と小田原であがる豊富な海の幸が相俟って生まれたものです。
小田原を通って箱根を越える旅人たちのために製造され、人々に珍重されたのが始まりと言われています。
かまぼこが名産の小田原の家庭では、作り立てのかまぼこやつみれを使ったおでんを正月に家族で囲むのが家族団らんの秘訣だそうです。
北陸【カニ刺し】
正月の贅沢なごちそうと言えば、「カニ」もその一つです。
各地で獲れるズワイガニは、その産地で呼び名が変わりますが、北陸地方で漁獲されるものは「越前ガニ」と呼ばれ、トップブランドとなっています。
日本海の潮の寒暖と複雑な海流の中で育った越前ガニの、味わいは甘く、ひきしまった肉質と芳醇なコクの蟹味噌をぎっしりと詰まっています。
新鮮な身を氷水で冷やすと、真っ白な身がまるで花が咲いたように美しく広がります。目と舌で楽しむことができるカニ刺しは、まさに正月にぴったりの一品でしょう。
東海【手ごね寿司】
三重県の志摩地方の郷土料理の一つにちらし寿司の一種である「手ごね寿司」というものがあります。
こちらは桶に酢飯とヅケのお刺身がぎっしり詰まった、見た目が特徴的な一品です。
名前の由来は二つあり、志摩の漁師が漁の合間に獲れたてのカツオをうすく切って醤油をかけ、酢飯と合わせて手で豪快に混ぜて食べたのが始まりと言う説と、大漁の祝いとして船主が船員にふるまったハレの食事と言う説が有ります。
昭和初期に発祥したといわれる「手ごね寿司」は、発祥当時はメインの具材がカツオでしたが、郷土料理として認知される様になってきた頃からは、ネタの種類も増え、今ではマグロもメインの具材に使用されています。
家族で食べれば、取り合いになること必至でしょう。
<近藤 俊/サカナ研究所>