大阪湾で『クロサバフグ』大発生の謎 邪魔者?それとも新ターゲット?

大阪湾で『クロサバフグ』大発生の謎 邪魔者?それとも新ターゲット?

タチウオシーズン真っ最中の大阪湾に、やっかいなゲストが異常発生!正体は『クロサバフグ』だ。糸を切ったりエサを食い散らかしたりと好き放題。中には同種を狙って出船を予定している遊漁船まで出てきた。

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(アイキャッチ画像提供:八千代丸)

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大阪湾にクロサバフグ襲来

「昨日なんか、朝のひと流しで船中15、16尾のフグが掛かってきたよ。それに糸は切るわ、テンヤやエサはかじりまくるわ、もう大変やで」とは、大阪・泉佐野から出船する夢丸の濱野船長の談。そのフグの正体が、クロサバフグであると言う。

大阪湾で『クロサバフグ』大発生の謎 邪魔者?それとも新ターゲット?夢丸で上がったクロサバフグ(提供:夢丸)

詳しく話を聞くと、クロサバフグが大阪湾で釣れ出したのは11月7~8日頃からで、突然の大量発生だった。サイズも1kg以上あるような立派な大きさだ。船長自身は、毒がないフグであろうとは言え、100%明確ではないので、釣り人にはリリースを勧めている。

これまで冬場には、ショウサイフグ釣りをしている大阪・樽井の八千代丸船長によると、「釣ろうと思えばいくらでも釣れる。それに非常に引きが強い…とお客さんも喜んでくれてますよ」との事。

タチウオの釣果が悪い大きな潮回りでも、クロサバフグのお土産で楽しんで貰えるのではないか…とクロサバフグを狙っての出船を予定している。

大阪湾で『クロサバフグ』大発生の謎 邪魔者?それとも新ターゲット?八千代丸で上がった大型(提供:八千代丸)

大阪湾では珍しい種類

ちなみに大阪湾でサバフグと言えば、無毒と紹介されているシロサバフグのイメージが強く、味で言うと、釣りの対象魚として知られるショウサイフグなど、他のフグに比べると少し水っぽく、唐揚げなどで食べるくらい。ただし、1尾が1kg前後もあって、それがたくさん釣れるとなれば話は別だろう。

問題点もある。普段はあまり見られないクロサバフグだけに、本当にそうなのか…。もしかしたら、シロサバフグやクロサバフグに似ながら、食べる事ができないドクサバフグなどではないのか…と。

専門家に聞く

そこで、大阪府岬町にある大阪府立環境農林水産総合研究所・水産技術センターに問い合わせてみた。話を伺ったのは、同センター研究員の山中智之さん。

山中さんによると、同センターにも8日頃に「あまり見た事がないフグが獲れた」と持ち込まれたとの事。これを同定したところ、クロサバフグである事が分かった。

元々、大阪湾では底曳き網や板曳き網で、サバフグが漁獲されているが、ほとんどがシロサバフグであり、普段はクロサバフグは見かけないか、居ても非常に珍しいと言う。

食用可能なサバフグ2種の見分け方

食用にできるのはシロサバフグとクロサバフグ。見分け方はいくつかあるが、分かりやすいのは尾ビレ。尾ビレの下方のみ白っぽいのがシロサバフグ、上下の両端が白いのがクロサバフグである。ほかにも、背中の小さな棘の有無でも判断はできるとの事。

大阪湾で『クロサバフグ』大発生の謎 邪魔者?それとも新ターゲット?大阪湾にも多いシロサバフグ(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

「今のところ、国内においてはシロサバフグ、クロサバフグともに毒を持った個体が発見されていない事もあって、国内でも可食部位については問題はないと思いますが、国外では希に毒を持ったクロサバフグ、シロサバフグの報告もあるので、内臓の扱いなどは意識しておいた方がいいと思います」と山中さんの談。

無毒でも素人料理は厳禁

今回のクロサバフグに関して、大阪湾で釣ったものについては美味しく食べられる事が分かったが、無毒が分かっていると言え、大阪府ではシロサバフグやクロサバフグでも可食部位が、筋肉、皮、精巣のみと決められている。

そのため、内臓を含めた処理に関しては、フグ処理登録者の資格を持った人が処理をする事。無毒だからと言って、決して素人が料理はしてはいけないのだ。

ドクサバフグの可能性は?

また、無毒のシロサバフグ、クロサバフグに似ているが、筋肉にも毒を持ち食べられない種類としてドクサバフグが知られている。ただ、このフグは南方系の種類で、日本の近海では東シナ海などから主な報告があり、「南日本太平洋沿岸の魚類」という図鑑によると、関西圏では和歌山・田辺沖で1993年から2001年の9年間に5個体の記録があるとの事だ。

大阪湾では、まだ見つかっていないので可能性は低いらしいが、大阪湾の目と鼻の先である田辺沖で見つかっているので、可能性はゼロではない。なので、余計に素人料理は慎みたい。ちなみに見分け方としては、シロサバフグにもある背面の棘が尻尾近くまである点だ。

厄介な敵か新しいターゲットか

なぜ、タチウオ釣りのテンヤに掛かってくるほど大量に大阪湾へ入り込んできたのかは不明だが、シーズン的には、これから活発になるとの事で、しばらくは大阪湾に生息するものと推測されているそうだ。タチウオ釣りの厄介な敵となるのか、珍しくも嬉しいターゲットとなるのかは、まだ釣り船、釣り人次第と言ったところか。

<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>