静岡県、御前崎沖。東には深淵なる駿河湾が控え、西には広大な遠州灘が広がる。その中間に位置するこのエリアは、起伏に富んだ地形と潮通しの良さで抜群の魚影を誇り、オフショアゲームの一大フィールドとなっている。
新進気鋭のルアー船
9月30日にお世話になったのは、御前崎港から出船している波丸。
今年4月から営業を始めた新進気鋭のルアー船だ。
船長の伊村佳通さんは、タイラバには人一倍こだわりがあり、年間を通してマダイをメーンターゲットとしている。
ただし、時期やアングラーの要望に応じて、青物やタチウオなども狙っていく。
特に御前崎沖では良型のカンパチが狙え、今年はカツオもよくヒットしているとのこと。
当日は7人の乗合。
午前5時に集合し、5時半に船は岸壁を離れた。
御前崎ではこの時期のサオ入れは午前6時と決まっている。
ポイントまでゆっくり向かい、船長の「どうぞ」のアナウンスが流れたのは、6時を少し回ったころだった。
タイラバのリトリーブは速めに
波丸でのタイラバ、ジギングは基本的にドテラ流しで行う。
そのためアングラーは片舷に並ぶ必要があり、大きな船にもかかわらず定員は8人。
おかげで荷物を置くスペースも十分確保でき、ゆったりと釣りを楽しむことができた。
最初のポイントは比較的浅めの水深60m。
風がなく潮もほとんど動かないため、120gの『紅牙ベイラバーフリー/DAIWA』を背負ったラインはまっすぐ下に向かって伸びている。
「リトリーブはちょっと速めの方がいいですよ」と伊村船長。
皆黙々とリトリーブとフォールを繰り返すなか、弥富の諸田さんはミヨシでせわしなくジグをシャクり続けている。
そう、彼の狙いはカンパチ。
数日前にも3kgクラスが上がっており、マダイには目もくれずひたすら重労働に励んでいる。
タイラバで船中ファーストヒットのハマチが上がった後、トモの方がにわかに騒がしくなった。
たまり場でも通過したのか、次々上がってきたのはグッドサイズのホウキハタ。
ホウキハタってこんなに釣れる魚だっけ?と疑いたくなるような連発劇だ。
フォールに反応、縦の動きに反応するときはタイラバ有利
さらにアヤメカサゴ、ウッカリカサゴ、キダイなどの定番ゲストが一通り顔を見せた後、ようやく私に本命らしきバイト。
ボトムからすぐ上のヒットだったことを聞いた船長は、「やっぱりフォールを意識してますね」とポツリ。
その日によって縦の動きに反応がいいときと、横の動きに反応がいいときがあるようで、縦の動きに反応がいいときはタイラバに圧倒的に分があるらしい。
ネットに収まったのは68cmのきれいなメスのマダイ。
これを見たミヨシのジギング組、いつの間にかタイラバロッドに持ち替え、静かにリトリーブを繰り返していた……。
そして、反対舷でジギングをしていた伊村船長にビッグヒット。
ロッドが一気に絞られ、ズルズルとラインが出されていくが、さすがアングラーとしても一流の伊村船長、全く慌てることなく冷静にやり取りする。
やがて海面下に茶色い大きな魚影。
カンパチだ。
サイズは3kgちょいといったところか。
このサイズは御前崎ならでは。
この興奮さめやらぬ内に、今度は男らしくロングジグをシャクり続けていた諸田さんにヒット
これもカンパチか?
注目が集まるが、上がってきたのはワラサ。
普段なら十分うれしいはずだが、諸田さんはがっくり(笑)。
その後、船中はワラサラッシュに突入。
ゲストターゲットも豊富
タイラバでは依然根魚やキダイが釣れ盛り、2kgクラスのウッカリカサゴまで登場。
ゴジラの異名を取るのが分かるぐらい、いかつい顔つきだ。
だが、ジギング組はそれを上回る好調ぶりで、豊田の浜中さんはワラサのツインヒットまで披露。
その後も浜中さんは完全にパターンをつかみ、スロージャークとフォールのパターンで、次々ワラサを掛けていく。
一方諸田さんはバラシにつぐバラシ。
次にヒットさせた時、「それバラしたら罰金ね」と言うと、途端にファイトが慎重に……。
そして上がってきたのは、なんと予想外のマダイだった。
御前崎沖はタイラバ有望
そして、午後1時に終了。
マダイは船中2尾だったが、ホウキハタや巨大ウッカリカサゴ、良型アヤメカサゴにイサキ、ワラサにカンパチと、多彩な顔ぶれは御前崎沖のポテンシャルの大きさを物語っていた。
下船後、伊村船長にタイラバについていろいろ聞いてみたが、とにかく奥の深い話が聞けた。
ドテラ流しでのトレースコースのコントロールや、ワームの付け方や使い方、あえて太ラインを使う意味、シンカーの形状など全て書くととても紙面が足りないので割愛するが、詳しく知りたい人は一度乗船することを強くお勧めしたい。
自身のタイラバが確実にスキルアップすることは間違いないだろう。
<稲沢市・長谷川与之/TSURINEWS編>