「焼き魚」は最もメジャーな魚料理の一つです。とはいえ、家庭のグリルでおいしく焼き上げるのは意外に難しいもの。今回は、誰でも美味しく魚を焼くための3つの極意を紹介します。
焼き魚
自宅で焼く魚の代表といえば、サンマの塩焼きやアジの干物などでしょう。でも、焼き過ぎてしまったりと、魚焼きグリルでの調理に誰しも一度は難しさを感じたことがあるのではないでしょうか。
例えば…..
・皮だけ焼けて、生焼け
・焼きすぎてパサパサ
・魚に焼きムラがある
焼き魚は大好きだけど美味しく料理できないと悩んでいるそこのあなたに吉報。
美味しく料理するための3つの極意を伝授します。この極意を押さえるだけで、過程でお手軽に理想の美味しい焼き魚が食べられるようになります。
極意① 仕上がりの味を決める下処理
まず第一の極意は魚を焼く前の作業になります。
振り塩は焼く前20分~1時間前に
干物や漬け魚以外は『必ず焼く前にはまず、両面に味付けではない振り塩を振って20分から1時間程置いて置きましょう』。
※塩は約30cmの高さから振ることで、ムラなく均一に行き渡ります。
これにはいくつかの効果があります。
・臭みを取る
・身の弾力を増やす効果
・旨味成分の倍増
振り塩は、浸透圧を利用して魚から余計な水分とともに身に含まれた魚特有の臭み成分を除去する効果があります。
特に、サンマ、アジ、イワシ、サバといった青魚は臭みが強い種類なので、少し長めに寝かせることで臭みを取ることができます。また振り塩の代わりに臭み取りとしては酒を振りかけるのも有効です。
実はこの工程は余分な水分を除去するだけでなく、同時に身のタンパク質が変成し弾力が増し、焼き崩れを防ぐことにも繋がります。
さらにはタンパク質室分解酵素が働くことで、旨味も増し仕上がりの味を格段にUPさせることができます。
余分な水を取る
塩、酒、どちらの場合も、魚から出てきた水気はキッチンペーパーなどで拭き取るか、さっと水洗いしましょう。洗ったあとは忘れずに身についた水分をよく拭きとるようにしましょう。
表面に滲み出てくる水分を絶対にそのままに調理しないこと。余分な水分を拭き取らずに焼いてしまうと、魚の臭みが表面にくっついてしまい、より臭みが出てしまうことがあります。
下味
塩焼きにする場合は、余分な水分を拭き取ったあとに味付けをしましょう。
この時、塩を振って時間が経ってしまうと、また身から水が出てしまいます。あまりにも水分が奪われてしまうと、身がパサパサになってしまうので、味付けで塩を振った場合は、なるべく早く焼く工程に進んでください。
そして最後に焦げやすい鰭(ヒレ)や尾鰭に軽く押さえるようにして化粧潮をまぶします。こういった一手間で見た目も美味しい焼き魚になります。
極意② グリル内の火加減調節
焼き魚の調理において、もっとも重要なのがこの火加減です。焼く前、焼き途中、焼き終わりの3段階で火加減を調整するのがよいです。
各パートごとに解説していきます。
温度にムラがあることを忘れずに
まず、調理パートに入る前に1つだけ注意点です。大前提として、グリル内の温度は一定ではなく、場所によって火力の強い部分、弱い部分があります。
網の中心付近は火から一番遠くなるので温度も安定せず、こちらの思惑通りに焼きにくいです。
バーナーに近い両端に寄せて焼くようにしましょう。
奥にもバーナーが付いている場合は、火が通りにくい頭を奥、焦げやすい尾を手前にしましょう。
自宅のグリルの火の出方を把握し、効率的に並べて使うことが肝心です。
予熱
では、調理パートです。
まず、いきなり魚を焼く前にグリル内を予熱します。これは網に魚が張り付くことを防止するためです。
魚の身に火が通ると、タンパク質が変性し、金属と反応して熱凝着という現象が起こってしまいます。
この熱凝着という現象は50度くらいの温度帯で起こり始めます。そしてある一定の温度になると、タンパク質は金属と張り付くのです。
これらの温度帯は、調理の適温の180度に対して、低温と呼ばれます。この温度帯を超えると身が張り付くこともなく、表面をこんがりと焼くことができます。
予熱の時間は2~3分くらい強火で温めればOK。これに加え、網に油もしくは酢を薄く塗ると、さらにくっつきにくくなります。
焼く時の向き
しっかりと予熱ができたら魚を網に乗せます。魚を網に乗せる時は盛り付けたときに表になる方から焼き始めます。
魚の盛りつけの基本では、一尾丸々の場合は頭を左、切り身は皮目が表に来るように。
これを意識するだけで、盛り付けが美しくなります。
焼きはじめの温度
魚を焼くには「強火の遠火で」とよく言われますが、これは炭火で焼いていた時代やBBQなどでの話です。
強火だと焦げやすくなってしまうので、少し火の強い中火くらいに設定し、焼き始めましょう。
表面に適度な焼き色がついたら、あとは裏からじっくり火を通す方が、表面を焦がすことなくきれいに焼けます。
割合としては、表4割、裏6割くらいの時間配分で焼いてください。
焼き時間は厚みや大きさにもよりますが、「一尾魚8~10分、切り身4~5分」位を目安に。
一部の例外を除いて、どのような魚も10分以上加熱することがないようにしましょう。また、弱火でじっくりと焼くと、どんどん水分やうまみが抜けていってしまいます。
焼き終わりの温度調節
白身魚は割とすぐに火が通るので、焼くのは短時間で問題ありません。
この時、生焼けが心配なら余熱を利用するようにしましょう。
裏表の表面がパリッと仕上がったら、火を止めます。ここで、すぐに盛り付けるのではなく、グリルの中にすこし放置してください。
グリル内の余熱で中までしっかり火がとおり、身がふっくら仕上がります。
余熱を利用することで水分を飛ばしすぎずに加熱することができるので、ちょっと強火で焼きすぎたかなって場合にもこの方法をご活用ください。
皮はこんがり、身はしっとりジューシーなのが理想の焼き上がりです。
極意③ ひっくり返すのは必ず1度きり
2つの極意について説明しましたが、最も大事なのかこの3つ目の極意です。
1本丸々だろうと、切り身だろうと、魚をひっくり返すのは必ず1度きりにしてください。
慣れないうちは焦げるのが心配で、なんどもひっくり返して様子を見たいものですが、何度もひっくり返してしまうと、身が崩れやすくなってしまいます。
しかも、それだけだはなく、身が崩れることにより、せっかく身に閉じ込めていた脂も滴り落ちてしまいます。
また、身が崩れると表面積が増えますので、水分が蒸発しやすくなりパサパサになるリスクが増えてしまいます。
手間をかけると美味しくなる
3つの極意を説明してきましたが、焼き魚で最も大事なのは焦がさないことです。
「焼き目」と「焦げ」は違うものです。焼き目とは美味しそうな「焦げ茶色」、焦げとは「黒」が混ざる色です。
焦げてしまうと苦味が出て、魚の旨味を邪魔してしまいます。
シンプルな調理だからこそ、しっかり丁寧に。そして、より準備に手間をかける事で、美味しく仕上げることができます。
今までとは1ランク上の美味しい焼き魚をぜひご自宅で作ってみてください。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>